さて、ギデオンの物語は、イスラエルの民がミデアン人に苦しめられていた時代に遡ります。ミデアン人たちは、まるで蝗の大群のように国に押し寄せ、畑を荒らし、家畜を奪い、人々の生活を脅かしていました。イスラエルの民は、その圧迫に耐えかね、主に助けを求めました。その時、主はギデオンを選び、彼を士師として立てられたのです。
ギデオンは、最初は自分がそのような大役を果たせるとは思っていませんでした。彼は、マナセ族のアビエゼル家に属する者で、父ヨアシュの家に住む普通の若者でした。しかし、主の御使いが彼に現れ、「勇敢な勇士よ、主はあなたと共におられる」と告げたのです。ギデオンは驚き、疑いながらも、主の言葉に従う決意をしました。
主はギデオンに、ミデアン人との戦いに向けて準備をするよう命じられました。しかし、ギデオンが集めた兵士の数は、当初3万2千人もいましたが、主はその数が多すぎると言われました。「民が『自分の力で勝った』と言って、私を忘れるかもしれないからだ」と主は言われました。そこで、主はギデオンに、兵士の数を減らすよう指示されたのです。
まず、主はギデオンに、恐れを抱いている者たちを帰らせるよう命じました。ギデオンが民に告げると、2万2千人が帰り、1万人だけが残りました。しかし、主はまだその数が多いと言われました。そこで、主はギデオンに、水を飲む様子を見て、兵士を選別するよう指示されたのです。
ギデオンは、兵士たちを水辺に連れて行き、彼らが水を飲む様子を観察しました。その中で、手で水をすくって飲む者と、ひざまずいて水を飲む者がいました。主はギデオンに、「手で水をすくって飲む者だけを選びなさい」と命じられました。その結果、わずか300人だけが選ばれました。ギデオンは、この小さな部隊でミデアン人の大軍と戦うことになったのです。
その夜、主はギデオンに、「ミデアン人の陣営に下りて行きなさい。私は彼らをあなたの手に渡す」と言われました。ギデオンは、従者プラと共に敵陣に近づきました。彼らが陣営に近づくと、ミデアン人たちは、夢の中で不安に駆られていました。一人の兵士が、仲間に夢の話をしていました。「見よ、私は夢を見た。大麦のパンが転がってきて、ミデアン人の天幕にぶつかり、それを倒したのだ」と。それを聞いた仲間は、「それはギデオンの剣に違いない。神がミデアン人と全陣営を彼の手に渡されたのだ」と答えました。
ギデオンはその話を聞き、主が確かに彼に勝利を与えてくださることを確信しました。彼はすぐに300人の兵士たちに戻り、彼らに戦いの準備をさせました。ギデオンは、兵士たちにそれぞれ角笛と、空のつぼ、そしてつぼの中にたいまつを持たせました。彼らは、夜の闇に紛れてミデアン人の陣営に近づき、一斉に角笛を吹き鳴らし、つぼを打ち砕いてたいまつを掲げました。そして、「主のため、ギデオンのため!」と叫びました。
ミデアン人たちは、突然の騒ぎに驚き、混乱に陥りました。彼らは、周りに敵が大勢いると思い込み、恐れおののいて逃げ出しました。主は、ミデアン人たちの間に混乱を起こし、彼らが互いに戦い合うようにされました。ギデオンと彼の300人の兵士たちは、逃げるミデアン人を追いかけ、彼らを打ち破りました。
この戦いを通して、主はギデオンに大きな勝利を与えられました。ギデオンは、自分の力ではなく、主の力によって勝利を得たことを深く悟りました。彼は、主に感謝をささげ、民たちに主の偉大な御業を語り伝えました。
この物語は、主がどのような状況でも、ご自身の民を守り、導かれることを示しています。ギデオンは、最初は自分にそのような力がないと思っていましたが、主の言葉に従い、信仰をもって行動した結果、大きな勝利を得ることができました。私たちも、自分の力に頼るのではなく、主に信頼し、主の導きに従うことが大切です。主は、私たちが思いもよらない方法で、私たちを助け、勝利へと導いてくださるのです。