聖書

「信仰と行い:ヤコブの教え」

ある日、イエスの兄弟ヤコブは、エルサレムの教会に集まった信徒たちに向かって、信仰と行いについて語り始めました。その日は、朝から晴れ渡った空が広がり、教会の中には柔らかな光が差し込んでいました。信徒たちは、ヤコブの言葉に耳を傾けるために、静かに座っていました。

ヤコブは、深い声で語り始めました。「私の兄弟たちよ。私たちの主イエス・キリストの栄光を信じる信仰を持っていると言うならば、人を差別してはなりません。もし、あなたがたの会堂に、金の指輪をはめ、立派な衣服を着た人が入って来たとします。そして、その同じ場所に、汚れた衣服を着た貧しい人も入って来たとします。もし、あなたがたが立派な衣服を着た人に目を留め、『ここにお座りください』と言い、貧しい人には、『そこに立っていなさい』とか、『私の足元に座りなさい』と言うならば、あなたがたは自分たちの中で差別をし、悪い考えで人を裁いているのではないでしょうか。」

ヤコブの言葉は、教会の中に静かな緊張をもたらしました。信徒たちは、自分たちの心の中を覗き込まれたかのように感じ、胸が締め付けられる思いがしました。ヤコブは、彼らの心の動揺を見逃さず、さらに語り続けました。

「聞きなさい。私の愛する兄弟たちよ。神は、この世の貧しい人たちを選び、信仰に富む者とし、神を愛する者たちに約束された御国を受け継ぐ者としてくださったではありませんか。しかし、あなたがたは貧しい人を辱めました。富んでいる人たちこそ、あなたがたを訴え、あなたがたを法廷に引きずり回しているではありませんか。彼らこそ、あなたがたが信じている尊い御名を冒涜している者たちではありませんか。」

ヤコブの言葉は、信徒たちの心に深く刺さりました。彼らは、自分たちが富んでいる者たちに媚び、貧しい者たちを軽んじてきたことを思い出し、悔い改めの思いが湧き上がってきました。

ヤコブは、さらに語り続けました。「もし、あなたがたが聖書の『隣人を自分自身のように愛しなさい』という律法を完全に守るならば、それは立派なことです。しかし、もしあなたがたが人を差別するならば、あなたがたは律法を破り、罪を犯しているのです。なぜなら、律法は一つであり、その一部を破るならば、すべてを破ったことになるからです。『姦淫するな』と言われた方は、『殺すな』とも言われました。もしあなたが姦淫をせず、人を殺しても、あなたは律法を破った者となるのです。」

信徒たちは、ヤコブの言葉に深くうなずきました。彼らは、自分たちが律法の一部を守りながら、他の部分を軽んじてきたことに気づき、心から悔い改めようと決意しました。

ヤコブは、最後にこう締めくくりました。「ですから、行いのない信仰は、それ自体が死んだものです。ある人が、『あなたは信仰を持っています。私は行いを持っています。行いのないあなたの信仰を見せてください。私は、私の行いによって、私の信仰を見せましょう』と言うでしょう。あなたは、神は唯一であると信じています。それは結構なことです。しかし、悪霊でさえも信じて、震えおののいています。ああ、愚かな人よ。行いのない信仰がむなしいことを知りたいと思いますか。」

ヤコブの言葉は、信徒たちの心に深く刻まれました。彼らは、信仰が単なる言葉や考えだけでなく、具体的な行いによって表されるべきものであることを悟りました。そして、その日から、彼らは貧しい者たちを助け、隣人を愛する行いに励むようになりました。

教会の中には、再び静けさが戻りましたが、信徒たちの心には、新たな決意と希望が満ちていました。ヤコブの言葉は、彼らの信仰を新たにし、彼らを神の御心に従う者として導いたのです。

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