出エジプト記32章に基づく物語を、詳細で生き生きとした描写を用いて、神学的な正確さを保ちながら日本語でお伝えします。
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### 金の子牛の物語
モーセがシナイ山に登り、神から十戒を受け取るために四十日四十夜を過ごしていた頃、山のふもとではイスラエルの民が待ちきれなくなっていました。モーセが長い間戻ってこないことに不安を感じた民は、アロンのもとに集まり、こう言いました。
「モーセがどこに行ったのか分からない。私たちを導いてくれる神々を作ってくれ!」
アロンは民の要求に応じ、彼らに言いました。「あなたがたの妻や子供たちから金の耳飾りを持ってきなさい。」
民は喜んで金の耳飾りを持ち寄り、アロンに渡しました。アロンはその金を集め、鋳型に入れて金の子牛を作り上げました。民はそれを見て、喜びの声を上げ、「イスラエルよ、これがあなたをエジプトの地から導き出したあなたの神だ!」と叫びました。
翌日、民は早くから起き、金の子牛の前に祭壇を築き、犠牲を捧げ、宴会を始めました。彼らは食べ、飲み、踊り、騒ぎ立てました。その光景は、神がモーセに与えた律法とはかけ離れたものでした。
一方、シナイ山の頂上では、神がモーセに民の堕落を告げました。「早く下りなさい。あなたがエジプトの地から連れ上った民は、すでに道を外れている。彼らは私が命じた道から早くも離れ、金の子牛を作り、それを拝み、犠牲を捧げている。彼らは『これがあなたをエジプトから導き出したあなたの神だ』と言っている。」
神の怒りは激しく、モーセに言いました。「この民を見よ。彼らはかたくなな民だ。わたしの怒りが彼らに向かって燃え上がり、彼らを滅ぼし尽くそう。しかし、わたしはあなたを大いなる国民とする。」
モーセは神の怒りをなだめ、こう言いました。「主よ、なぜあなたの怒りがあなたの民に向かって燃え上がるのですか?あなたは大きな力と強い手をもって彼らをエジプトの地から導き出されたではありませんか。どうか、あなたの激しい怒りを静め、あなたの民にこの災いを下さないでください。エジプト人は『神は彼らを悪意をもって連れ出し、山で滅ぼし、地の面から絶やそうとした』と言うでしょう。どうか、あなたのしもべアブラハム、イサク、イスラエルに誓われたことを思い出してください。あなたは彼らに『あなたがたの子孫を天の星のように増やし、約束の地をあなたがたの子孫に与える』と誓われたのです。」
神はモーセの願いを聞き入れ、民に下そうとしていた災いを思いとどまりました。
モーセは山を下り、十戒が刻まれた石板を手にしていました。彼の従者ヨシュアも一緒でした。山を下りながら、ヨシュアは民の騒ぎ声を聞き、モーセに言いました。「戦いの声がします。」
モーセは答えました。「それは勝利の叫び声でも、敗北の叫び声でもない。歌う声だ。」
やがて、モーセは宿営に近づき、金の子牛と民の踊る姿を目にしました。彼の怒りは燃え上がり、手にしていた石板を投げつけ、それを砕きました。そして、金の子牛を取り、火で溶かし、粉々に砕き、水にまぶして民に飲ませました。
モーセはアロンに言いました。「この民はあなたに何をしたというのか?なぜ彼らにこんな大罪を犯させたのか?」
アロンは答えました。「どうか、私の主の怒りを燃やさないでください。あなたはこの民が悪いことをすることを知っています。彼らは私に『私たちを導いてくれる神々を作ってくれ。モーセがどこに行ったのか分からないから』と言いました。そこで、私は彼らに『だれでも金を持っている者は、それを私に渡しなさい』と言いました。彼らは私に金を渡したので、私はそれを火に投げ入れたところ、この子牛が出てきたのです。」
モーセは民が制御不能になっているのを見て、宿営の入口に立ち、こう叫びました。「主につく者は、私のもとに来なさい。」
レビ族の者たちがモーセのもとに集まると、モーセは彼らに言いました。「イスラエルの神、主はこう言われる。『おのおの腰に剣を帯び、宿営の中を行き来し、兄弟であれ、友であれ、隣人であれ、金の子牛を拝んだ者を殺せ。』」
レビ族はモーセの命令に従い、その日、約三千人の民が剣で倒されました。モーセは民に言いました。「あなたがたは今日、主に仕えるために、おのおの自分の子や兄弟に逆らった。それゆえ、主は今日、あなたがたに祝福を与えられる。」
翌日、モーセは民に言いました。「あなたがたは大きな罪を犯した。しかし、私は主のもとに上り、あなたがたの罪のために祈ろう。」
モーセは再び主のもとに上り、こう言いました。「ああ、この民は大きな罪を犯し、金の神々を作りました。しかし、もしあなたが彼らの罪を赦してくださるなら、どうか、私をあなたの書物から消し去ってください。もし赦さないのであれば、私をこの民から消し去ってください。」
主はモーセに答えました。「わたしの書物から消し去るのは、わたしに対して罪を犯した者だけだ。今、あなたは行って、わたしがあなたに告げた地へ民を導きなさい。わたしの使いがあなたの前を行く。しかし、わたしが罰すべき日に、わたしは彼らの罪を罰する。」
そして、主は民に疫病を下し、金の子牛を作った罪のために彼らを罰しました。
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この物語は、神の律法に対する人間の不従順と、神の怒りと赦しの両面を示しています。モーセの執り成しの祈りは、神の憐れみと正義のバランスを象徴し、イスラエルの民が神との契約を守ることの重要性を教えています。