聖書

過越しの夜:神の救いとイスラエルの解放

出エジプト記12章に基づく物語を、詳細で生き生きとした描写を用いて、神学的な正確さを保ちながら日本語でお届けします。

エジプトの地は、長い間、イスラエルの民の苦しみの場となっていました。ファラオの心は頑なで、神がモーセを通して示された数々の奇跡にもかかわらず、イスラエルの民を解放することを拒み続けていました。しかし、神はご自身の民を救い出すために、最後にして最も厳しい裁きをエジプトにもたらそうとしていました。

その夜、神はモーセとアロンにこう告げられました。「この月をあなたがたの最初の月とし、年の初めの月とせよ。イスラエルの全会衆に告げて言え。この月の十日に、おのおのその父の家ごとに、羊を一頭、すなわち、家族ごとに羊を一頭用意しなさい。もし家族が羊一頭に足りないほど少ないなら、その人は隣の家族と共に、人数に応じて一頭を取り、めいめいの食べる量に応じてその羊を分けなければならない。その羊は、傷のない一歳の雄でなければならない。それを子羊かやぎのうちから取らなければならない。そして、この月の十四日までそれを守って置き、イスラエルの全会衆は夕暮れにそれをほふらなければならない。そして、その血を取り、羊を食べる家の入口の二つの門柱と、かもいにそれを塗らなければならない。その夜、その肉を食べなければならない。すなわち、それを火に焼いて、種を入れないパンと苦菜を添えて食べなければならない。」

モーセは神の言葉を忠実にイスラエルの民に伝えました。人々は神の命令に従い、それぞれの家族で羊を用意し、十四日の夕暮れにそれをほふりました。羊の血を取ると、彼らはそれを家の入口の門柱とかもいに塗りました。その血は、神がエジプトに下される裁きから彼らを守るしるしとなるものでした。

夜が更けると、神はエジプトの地を巡り、すべての初子を打たれました。エジプトの家々には、ファラオの宮殿から奴隷の家まで、初子の死が訪れました。しかし、イスラエルの家々には、門柱とかもいに羊の血が塗られていたため、神はその家を過ぎ越されました。これが「過越し」の出来事です。

その夜、エジプト中に大きな叫び声が上がりました。どの家にも死者が出たからです。ファラオはついに、モーセとアロンを呼び寄せ、こう言いました。「立ち上がって、私の民の中から出て行きなさい。あなたがたもイスラエル人も、行って、あなたがたの神に仕えなさい。あなたがたが言ったとおり、羊も牛も連れて行きなさい。そして、私のために祝福を祈ってくれ。」

イスラエルの民は急いでエジプトを出発する準備を始めました。彼らは種を入れないパンを持ち出しました。パンに種を入れて発酵させる時間がなかったからです。彼らはエジプト人から金や銀の飾り、衣類を受け取り、エジプトの富を携えて出て行きました。

こうして、イスラエルの民はエジプトの奴隷の家から解放され、神が彼らに約束された自由の地へと向かう旅が始まりました。この夜は、彼らにとって永遠に覚えるべき夜となりました。神は彼らに、「この日を覚えて、主のための祭りとしなさい。あなたがたは代々にわたってこれを守り、永遠の定めとしなさい」と命じられました。

この過越しの出来事は、神の民に対する神の救いの御手を示すものでした。羊の血は、神の裁きから彼らを守るしるしであり、後の時代に来られる真の過越しの子羊、イエス・キリストの贖いの血を指し示すものでした。イスラエルの民は、この夜を覚え、神の救いの御業を代々にわたって語り継いでいきました。

この物語は、神の救いの計画と、ご自身の民に対する深い愛を示すものです。過越しの出来事は、旧約聖書の中でも特に重要な出来事の一つであり、新約聖書におけるキリストの贖いの予型としても理解されています。

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