ある日のこと、エルサレムの丘の上に立つソロモン王は、遠く広がる畑と果樹園を見下ろしながら、深い思索にふけっていました。風がそよぎ、麦の穂が波打ち、オリーブの木々がゆっくりと揺れていました。彼はその景色を見つめながら、人生の不確かさと神の御心について思いを巡らせていました。

「あなたのパンを水の上に投げよ。多くの日を経て、それを見いだそう。」（伝道者の書11:1）

ソロモンはこの言葉を心に留め、その意味を深く考えました。彼は、人々が自分の持つものを惜しみなく与えることの重要性を悟りました。パンを水の上に投げるという行為は、一見無駄に見えるかもしれません。しかし、神はその行為を覚えておられ、時が来れば報いてくださるのです。ソロモンは、人々が自分の富や知識、愛を惜しみなく与えることの大切さを説くために、この言葉を記しました。

「七人に、また八人にも分け与えよ。どんな災いが地に起こるかを、あなたは知らないからだ。」（伝道者の書11:2）

彼はさらに、人々が将来の不確かさを恐れるのではなく、今この瞬間に与えることの重要性を強調しました。災いがいつ訪れるかは誰にも分かりません。しかし、与える心を持ち続けることで、神の祝福を受けることができるのです。ソロモンは、人々が互いに助け合い、支え合うことの美しさを思い描きました。

その日、ソロモンは町へと下り、人々の様子を見て回りました。市場では商人たちが忙しく働き、農民たちは収穫した作物を売り、子供たちは笑いながら走り回っていました。しかし、その中には貧しい人々もおり、彼らは食べ物や衣服を求めてうつむいていました。

ソロモンはその光景を見て、心を動かされました。彼は自分の持つ富を貧しい人々に分け与えることを決意し、家来たちに命じて食料や衣服を配り始めました。人々は驚き、感謝の言葉を口にしました。ソロモンは彼らにこう言いました。

「与えることは、神の御心にかなう行為です。私たちが持つものを惜しみなく分かち合うとき、神は私たちを祝福してくださいます。」

その夜、ソロモンは宮殿に戻り、再び丘の上に立ちました。彼は空を見上げ、星々がきらめく様子を眺めました。彼は神の偉大さと、人間の小ささを感じました。しかし、その小さな人間が神の愛を受けて生きていることを思うと、心が温かくなりました。

「雲が満ちれば、雨を地に注ぐ。木が南か北に倒れると、その倒れた所にそのまま横たわる。風を気にする者は種を蒔かず、雲を眺める者は刈り入れない。」（伝道者の書11:3-4）

ソロモンは、人生には不確かなことが多いことを認めました。しかし、それに怯えて何もしないのではなく、神を信じて前に進むことの重要性を悟りました。彼は、農夫が天候を気にしすぎて種を蒔かなければ、収穫は得られないことを知っていました。同様に、私たちも神の御心に従って行動しなければ、祝福を受けることはできないのです。

「あなたは、風の進む道を知らない。妊婦の胎に骨がどのようにできるかを知らない。それと同じように、すべてを造られる神のみわざを知ることはできない。」（伝道者の書11:5）

ソロモンは、神の御業の深遠さを思い、謙虚な気持ちになりました。人間の知恵や力では、神の計画を完全に理解することはできません。しかし、それでも私たちは神を信頼し、その導きに従うことが求められています。

「朝のうちにあなたの種を蒔け。夕方にも手を休めるな。どちらが良く育つか、あなたは知らないからだ。これが良いのか、あれが良いのか、ともに良いのか。」（伝道者の書11:6）

ソロモンは、人生において努力を惜しまず、常に最善を尽くすことの重要性を説きました。朝も夕も、私たちは神のために働き、与えられた使命を果たすべきです。結果は神に委ね、私たちはただ忠実に歩むことが求められています。

彼はこれらの教えを人々に伝え、彼らが神の御心に従って生きることを願いました。ソロモンは、人生の不確かさの中でも、神を信頼し、与える心を持ち続けることの大切さを繰り返し説きました。

そして、彼は最後にこう言いました。

「光は楽しい。太陽を見るのは目のために良い。人は多くの年を生き、そのすべてを楽しむがよい。しかし、暗い日々のことも忘れるな。その日々も多いのだから。」（伝道者の書11:7-8）

ソロモンは、人生には喜びも悲しみもあることを認めました。しかし、どんな時でも神を信頼し、その御心に従って歩むことが大切だと教えました。彼は、人々が神の愛と導きの中に生き、与える心を持ち続けることを願いながら、その日を終えました。

こうして、ソロモン王の教えは、エルサレムの人々の心に深く刻まれ、彼らは神の御心に従って生きることを学びました。与えることの喜び、神を信頼することの平安、そして人生の不確かさの中でも希望を持ち続けることの大切さが、彼らの生活の中に息づいていったのです。