聖書

コリント教会の一致と神の知恵

ある日のこと、コリントの教会にパウロが訪れました。彼はその地で多くの人々がキリストを信じ、信仰の道を歩み始めていることを知り、心から喜びました。しかし、彼はまた、教会の中に分裂や争いが生じていることも耳にしていました。人々は、「私はパウロにつく」「私はアポロにつく」と言い合い、互いに優劣を競っているようでした。

パウロはその状況を深く憂い、教会の信徒たちに語りかけました。

「兄弟たち、私はあなたがたに、神の御心に従って語ります。あなたがたはまだ肉に属する者であり、キリストにある幼子なのです。あなたがたの間にねたみや争いがあるのは、その証拠ではありませんか。あなたがたは、『私はパウロにつく』『私はアポロにつく』と言っていますが、これは人間的な思い上がりではありませんか。パウロとは何者ですか。アポロとは何者ですか。私たちはただ、あなたがたが信仰に導かれるために仕えた者にすぎません。私たちはそれぞれ、主から与えられた務めを果たしただけです。」

パウロは彼らの心に深く響くように、言葉を選びながら続けました。

「私が植え、アポロが水を注ぎました。しかし、成長させたのは神です。ですから、大切なのは、植える者でも水を注ぐ者でもなく、成長させてくださる神なのです。私たちは神の協力者であり、あなたがたは神の畑、神の建物なのです。」

彼は彼らが自分たちの信仰の基盤をしっかりと理解することを願い、さらに詳しく説明しました。

「私が与えたのは、神の恵みによって、知恵ある建築家のように土台を据えました。しかし、その上に建てる者は、それぞれが注意深く建てなければなりません。なぜなら、だれも、すでに据えられている土台のほかに、ほかの土台を据えることはできないからです。その土台とは、イエス・キリストです。」

パウロは彼らの目をしっかりと見つめ、言葉に力を込めました。

「もし、だれかがこの土台の上に、金、銀、宝石、木、草、わらなどで建てるなら、それぞれの働きは明らかになります。その日がそれを明らかにするのです。その日は火とともに現れ、その火がそれぞれの働きがどんなものであるかを試すからです。もし、だれかの建てたものが残れば、その人は報いを受けます。もし、だれかの建てたものが焼ければ、その人は損害を受けますが、自分自身は、火の中をくぐり抜けてきたように、救われるのです。」

彼は彼らが自分の信仰の働きを真剣に考えるように促しました。

「あなたがたは、神の神殿であり、神の御霊があなたがたに宿っていることを知らないのですか。もし、だれかが神の神殿を破壊するなら、神はその人を滅ぼされます。神の神殿は聖なるものだからです。その神殿とは、あなたがたです。」

パウロは彼らが自分たちの内に宿る神の御霊の尊さを理解することを願い、さらに語りかけました。

「だれも自分を欺いてはいけません。もし、あなたがたのうちに、自分がこの世の知者だと思う人がいるなら、その人は愚か者となって、真の知者になりなさい。この世の知恵は、神の御前では愚かだからです。『神は、知者たちを彼らの悪巧みによって捕らえられる』と書いてあり、また、『主は、知者たちの論議がむなしいことを知っておられる』とも書いてあります。」

彼は彼らがこの世の知恵に頼るのではなく、神の知恵に従うことを強く勧めました。

「ですから、だれも人間を誇ってはいけません。すべてはあなたがたのものです。パウロも、アポロも、ケファも、世界も、生も、死も、今あるものも、後に来るものも、すべてはあなたがたのものです。そして、あなたがたはキリストのものであり、キリストは神のものです。」

パウロの言葉は、コリントの信徒たちの心に深く響きました。彼らは自分たちが神の建物であり、神の御霊が宿る神殿であることを悟り、互いに誇り合うのではなく、神の御心に従って歩むことの大切さを学びました。

そして、彼らはパウロの教えに従い、教会の一致を保ち、キリストの愛をもって互いに仕え合うことを誓いました。彼らの心には、神の知恵が満ち、彼らの信仰はますます強く、確かなものとなっていったのです。

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