ダビデは王座に着いてからしばらく経ったある日、彼はかつての親友であり、敵対したサウル王の家系について思いを巡らせた。サウルの家系に残された者がいるかどうかを尋ねた。ダビデは、サウルの家系に残された者がいれば、ヨナタンのために慈しみを示したいと考えていた。ヨナタンはダビデにとって兄弟のような存在であり、彼との間に結ばれた契約を忘れていなかったからだ。
ダビデは家臣たちを呼び寄せ、サウルの家系に残された者がいるかどうかを尋ねた。その時、サウルの家のしもべであったツィバという男が王の前に出てきた。ツィバはダビデに言った。「王よ、サウルの家にはまだヨナタンの子がおります。彼の足は不自由ですが、生きておられます。」
ダビデはその言葉を聞いて驚き、すぐにその子を連れてくるように命じた。その子の名はメフィボシェテと言い、ヨナタンの息子であった。メフィボシェテは幼い頃に父ヨナタンと祖父サウルが戦死した時、乳母が彼を抱えて逃げようとしたが、慌てたあまり彼を落としてしまい、それ以来足が不自由になっていた。
メフィボシェテがダビデの前に連れてこられると、彼は恐れおののき、地面にひれ伏した。ダビデは彼を見て、心に深い憐れみを覚えた。ダビデはメフィボシェテに言った。「恐れることはない。私はあなたの父ヨナタンとの間に結んだ契約を覚えている。私はあなたに慈しみを示し、あなたの祖父サウルのすべての土地をあなたに返す。そして、あなたは常に私の食卓で食事をする者となるだろう。」
メフィボシェテは驚き、王の前にひれ伏して言った。「王よ、このしもべは何者でしょうか。あなたは死んだ犬のような私に目を留め、これほどまでに慈しみを示してくださるのですか。」
ダビデは彼の言葉に心を動かされ、ツィバを呼び寄せて言った。「私はサウルの家のすべての土地をメフィボシェテに返す。あなたとあなたの息子たち、そしてしもべたちは、その土地を耕し、収穫をメフィボシェテのために管理しなさい。しかし、メフィボシェテ自身は常に私の食卓で食事をする者となる。」
ツィバは王の命令に従い、メフィボシェテのために土地を管理することになった。メフィボシェテはそれ以来、ダビデの宮殿に住み、王の食卓で食事をする者となった。彼は王の家族の一員として扱われ、ダビデの慈しみを深く感じていた。
この出来事は、ダビデがヨナタンとの契約を守り、彼の家系に慈しみを示したことを象徴していた。ダビデは、敵対したサウルの家系に対しても、神の慈しみと正義を示すことを忘れなかった。メフィボシェテは、ダビデの宮殿で安らかな日々を過ごし、彼の不自由な足にもかかわらず、王の食卓で共に食事をする者として尊ばれた。
この物語は、神の慈しみがどのような状況にあっても変わらないことを示している。ダビデは、ヨナタンとの友情と契約を守り、敵対した家系に対しても慈しみを示した。それは、神が私たちに対しても変わらない愛と慈しみを持っておられることを思い起こさせる。メフィボシェテの人生は、神の恵みによって一変し、彼は王の食卓で共に食事をする者となった。これは、私たちも神の恵みによって新たな命を与えられ、神の家族として迎え入れられることを示している。