イスラエルの地に、サムエルという預言者がいました。彼は神に選ばれ、民を導く者として長年忠実に仕えていました。しかし、時が経つにつれて、サムエルは年老い、彼の息子たちをイスラエルの指導者として立てました。長男の名前はヨエル、次男の名前はアビヤといいました。しかし、彼らは父の道を歩まず、不正を働き、賄賂を取り、公正な裁きを行いませんでした。
イスラエルの民はこの状況に不満を抱き、ついにサムエルのもとに集まって言いました。「あなたは年老い、あなたの息子たちはあなたの道を歩んでいません。今や、私たちのために他のすべての国々のように、私たちを裁く王を立ててください。」
この要求を聞いたサムエルは心に深く傷つきました。彼は長年、神の民を導き、神の律法に従って彼らを裁いてきました。しかし、今や民は神の導きではなく、人間の王を求めたのです。サムエルはこのことを神に祈り、心のうちに悩みながら主に訴えました。
すると、主はサムエルに言われました。「民があなたに言うままに、彼らの声に従いなさい。彼らが拒んだのはあなたではなく、彼らの上に王として治めるわたしを拒んだのだ。彼らは、わたしがエジプトから彼らを導き出した日から今日まで、わたしを捨てて他の神々に仕えてきたように、今もあなたに対してしているのだ。彼らの声に従いなさい。ただし、彼らにはっきりと警告し、彼らを治める王がどのような権限を持つかを告げなさい。」
サムエルは主の言葉に従い、民に王を立てることの意味を詳しく説明しました。彼は彼らに向かって言いました。「あなたがたを治める王は、あなたがたの息子たちを徴兵し、戦車の兵士や騎兵として仕えさせ、彼らを自分の戦車の前を走らせるでしょう。また、あなたがたの娘たちを香料作りや料理人、パン焼きとして仕えさせます。あなたがたの最上の畑やぶどう畑、オリーブ畑を取り上げ、それを自分の家来たちに与えるでしょう。あなたがたの穀物やぶどうの十分の一を取り、それを宮廷の役人や家来たちに分け与えるでしょう。あなたがたの奴隷や女奴隷、若い者たちやろばを取り上げ、自分の仕事に使うでしょう。また、あなたがたの羊の十分の一を取り上げ、あなたがたは彼の奴隷となるでしょう。その日、あなたがたは自分が選んだ王のために泣き叫ぶが、主はその日にあなたがたに答えてはくださらない。」
サムエルはこれらの警告を民に伝えましたが、民は彼の言葉に耳を傾けようとしませんでした。彼らは言いました。「いいえ、私たちには王が必要です。私たちも他のすべての国々のように、王が私たちを治め、私たちの先頭に立って戦ってくれるべきです。」
サムエルは民の言葉をすべて主に伝えました。すると、主はサムエルに言われました。「彼らの声に従い、彼らのために王を立てなさい。」サムエルはイスラエルの民に、「それぞれ自分の町に帰りなさい」と言いました。
こうして、イスラエルの民は神の警告を無視し、人間の王を求める道を選びました。彼らは神の導きよりも、目に見える力と権威を求めたのです。しかし、この選択が後に彼らにどのような結果をもたらすか、彼らはまだ知りませんでした。サムエルは心に深い悲しみを抱きつつ、神の言葉に従い、王を立てる準備を始めました。彼はこの出来事が、神の民にとって新たな時代の始まりであることを悟りましたが、同時にそれが神からの試練であることも感じていました。
この物語は、神の民が神の導きに従うことの重要性を教えています。人間の力や権威に頼ることは、時に神からの離反を意味するのです。しかし、神は民の選択を許し、彼らがその結果から学ぶことを望んでおられました。