聖書

コリント教会の秩序と愛の学び

コリントの教会は、活気に満ちた信仰の共同体でした。しかし、その中には混乱もありました。特に、礼拝中の賜物の行使について、多くの疑問が湧き上がっていました。異言や預言、その他の霊的賜物がどのように用いられるべきか、信徒たちは困惑していました。そのような中で、パウロは彼らに手紙を書き、神の秩序と愛に基づいた指導を与えました。

ある安息日、コリントの教会はいつものように集まっていました。会堂は人々で溢れ、賛美の声が響き渡っていました。しかし、礼拝が進むにつれ、異言を語る者たちが次々と立ち上がり、同時に話し始めました。その声は重なり合い、誰が何を言っているのか、ほとんど聞き取れませんでした。預言を語ろうとする者たちも、その騒ぎの中で声を上げることができず、困惑した表情を浮かべていました。

その時、教会の一角に座っていたステパノという名の長老が立ち上がり、静かに手を挙げました。彼はパウロからの手紙を持ち、それを朗読し始めました。

「兄弟姉妹たち、霊的な賜物を求めるのであれば、教会の成長のために役立つものを求めなさい。異言を語る者は、人に向かって話すのではなく、神に向かって話しています。なぜなら、彼は誰にも理解されない霊の言葉を語っているからです。しかし、預言をする者は、人々を建て上げ、励まし、慰めるために話します。」

ステパノの声は静かながらも力強く、教会全体に響き渡りました。人々は彼の言葉に耳を傾け、騒ぎは次第に静まっていきました。

「異言を語る者は、自分自身を建て上げますが、預言をする者は教会を建て上げます。ですから、異言を語る者よりも、預言をする者を私は望みます。ただし、異言を語る者がそれを解き明かすのであれば、教会は建て上げられます。」

ステパノはさらに続けました。

「もし私が異言で話すなら、私の霊は祈っていますが、私の知性は実を結びません。それでは、どうすればよいのでしょうか?私は霊において祈り、また知性においても祈ります。霊において賛美し、また知性においても賛美します。そうでなければ、あなたが霊において祝福を与えているとき、その場にいる未信者は、あなたが何を言っているのか理解できないので、『あなたがたは狂っている』と言うでしょう。」

教会の人々は、ステパノの言葉に深くうなずきました。彼らは、自分たちの行動が未信者にとってどのように映るかを考え始めました。

「ですから、兄弟姉妹たち、どうかこのことを心に留めてください。異言を語ることを禁じるのではなく、すべてを秩序正しく行うように努めなさい。」

ステパノは手紙を読み終え、静かに座りました。教会はしばらくの間、深い沈黙に包まれました。そして、一人の若い女性が立ち上がり、預言を語り始めました。彼女の言葉は明確で、人々の心に直接響きました。彼女は神の愛と赦しについて語り、教会全体がその言葉に励まされ、慰められました。

その後、異言を語る者たちも、順番に立ち上がり、その言葉を解き明かす者たちがそれを翻訳しました。教会は秩序を取り戻し、神の御心に従って礼拝を続けました。

その日、コリントの教会は、パウロの教えを通して、神の秩序と愛の重要性を学びました。彼らは、賜物が自己満足のためではなく、教会全体の成長と未信者への証しのために与えられていることを深く悟ったのです。

礼拝が終わり、人々は互いに励まし合い、神の恵みを感謝しながら家路につきました。コリントの教会は、この日を境に、より成熟した信仰の共同体として歩み始めたのでした。

LEAVE A RESPONSE

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です