**詩篇31篇に基づく物語:信頼と救いの約束**
ある日のこと、ユダの荒野を吹き渡る風は熱く、砂塵が空を覆っていた。ダビデ王は岩陰に身を隠し、額に浮かぶ汗を拭いながら、深いため息をついた。背後には敵の足音が響き、彼の心は不安に揺れていた。彼はふと、幼い頃に父の羊の群れを守っていた日々を思い出した。あの時も、獅子や熊から羊を守るために、孤独な戦いをしていた。しかし今、彼を脅かすのは獣ではなく、自分を殺そうとする人間たちだった。
「主よ、あなたに身を避けます。どうか私を恥じさせないでください。」
ダビデは唇を震わせながら祈った。彼の声はかすれていたが、心の底から湧き上がる信仰は揺るがなかった。詩篇31篇の言葉が、彼の胸に静かに広がっていく。
**「あなたの義をもって、私を助け出してください。早く私に耳を傾け、私を救い出してください。私のために堅固な岩、救いのとりでとなってください。」**
彼の目には、かつてサウル王に追われた日々がよみがえった。あの時も、主は彼を洞窟に導き、敵の手から守ってくださった。しかし今、彼を襲う苦難は前よりも重く、心は張り裂けそうだった。
「主は私の岩、私のとりで。私の神は、私の信頼の源。」
ダビデは岩に手を当て、その冷たさに力を得た。彼は再び祈った。
**「私はあなたの手に私の霊をゆだねます。主、真実の神よ、私を贖ってください。」**
すると、遠くから風の音が変わり、砂嵐が静まっていくのが感じられた。空には一筋の光が差し、ダビデの顔を照らした。彼の心に平安が訪れ、敵の足音は次第に遠のいていった。
数日後、ダビデは無事に身を隠していた場所を脱出し、仲間のもとに戻ることができた。彼はこの経験を詩に記し、後の世に残した。
**「主を畏れる者たちよ、主に信頼せよ。主は苦しむ者の魂を顧み、悩む者を救い出される。」**
彼の言葉は、苦難の中にあるすべての人々への励ましとなった。主は決してご自分を信じる者を見捨てず、その叫びに必ず耳を傾けてくださる。ダビデはこの真理を、自らの人生を通して証ししたのだった。
そして今日も、この約束は生きている。私たちが暗闇の中にいるとき、主は私たちの祈りを聞き、確かな救いの手を差し伸べてくださる。
**「主の慈しみはとこしえまで。主を信じる者に、救いがある。」**