**「鉄の山を砕く愛」**
かつて荒れ果てた都エルサレムは、深い悲しみに包まれていた。主の民は長い間、背きの罪により捕囚の憂き目を見、都は廃墟のようになっていた。しかし、その暗闇の中にも、主は預言者イザヤを通して、驚くべき約束を語られた。
**「不妊の女よ、喜び歌え。子を産まなかった者よ、喜びの声をあげ、叫び声をあげよ。ひとりでいる女の子らは、夫ある女よりも多くの子を持つからだ。」**(イザヤ54:1)
この言葉は、まるで冬の荒野に突然、春の風が吹き込むかのようだった。主は、不毛と見えたイスラエルに、再び命を吹き込もうとしておられた。かつては恥と寂しさに沈んでいた「不妊の女」——それは、滅びたエルサレムの象徴だった。しかし、主は彼女に向かって、「喜べ」と命じられた。なぜなら、これから彼女の子らは、かつてないほど増え広がるからだ。
預言者の声は、さらに力強く響いた。
**「あなたの天幕の場所を広げ、あなたの住まいの幕を張り広げよ。控えるな。あなたの綱を長くし、あなたの杭を強固にせよ。」**(イザヤ54:2)
天幕とは、主の民の象徴である。彼らはこれまで、縮こまり、恐れに縛られていた。しかし、主は彼らに大胆に前進するようにと命じられた。綱を伸ばし、杭を打ち込む——それは、神の国が広がり、決して揺るがないことを意味していた。
しかし、どうしてこんなことが可能なのか? 人々の心に疑いがよぎった。彼らは長い間、敵に踏みにじられ、辱めを受けてきた。それでも主は言われる。
**「あなたは恐れることはない、あなたは恥じることはない。若い時の恥をあなたは覚えることなく、やもめのときの辱めをも、もはや思い出すことはない。」**(イザヤ54:4)
主は、過去の恥を完全に消し去り、新しい契約をもって民を迎え入れようとしておられた。その理由は、ただ一つ——
**「あなたを造られた方はあなたの夫。万軍の主がその御名。あなたを贖う方は、イスラエルの聖なる方。全地の神と呼ばれる。」**(イザヤ54:5)
主こそが真の夫であり、決して見捨てることをされない。たとえ民が背いても、主の愛は変わらない。まるで荒れ狂う海を鎮めるように、主は怒りを捨て、永遠の愛で民を抱きしめられる。
**「わたしは、とこしえのいつくしみをもってあなたをあわれみ、あなたを贖う。」**(イザヤ54:8)
この約束は、ただの慰めではない。主は、鉄の山をも砕くほどの力で、すべての敵を退け、民を守られる。
**「見よ、わたしはあなたのために、青銅を砕いて鉄を造り、あなたのために、鉄を砕いて金を造る。」**(イザヤ54:16-17)
どんなに強い敵も、主の前には無力だ。そして、最後に残るのは、主の揺るがない平和——
**「すべてあなたに向かって造られる武器は役に立たず、すべてののしる舌は、あなたと争うとき、あなたがこれを罪に定める。」**(イザヤ54:17)
こうして、エルサレムは再び喜びに満ち、主の栄光が都を覆う。かつての荒れ野は、命の園となり、主の民は永遠に安らぐ。
この約束は、ただイスラエルのためだけでなく、今日を生きるすべての者への希望の言葉だ。主は今も、「恐れるな、わたしはあなたと共にいる」と語り続けておられる。