聖書

舌の力:ヤコブの手紙第3章の物語

**舌の力:ヤコブの手紙第3章に基づく物語**

エルサレムの西、小さな村にゼバディという名の教師が住んでいた。彼は信仰深く、多くの人々から尊敬されていたが、ある日、彼の心は不安で満たされていた。村の人々の間で争いが絶えず、その原因が「言葉」にあることを痛感していたからだ。

ある安息日の朝、ゼバディは会堂で教えを説いていた。彼の前に集まった人々の中には、商人のヨナタン、織物職人のリブカ、そして若い羊飼いのエリアスがいた。皆、熱心に耳を傾けていたが、ふと、後ろの方で二人の男が小声で言い争っているのが聞こえた。

「お前の取引は不正だ!」
「そんなことはない! お前こそ嘘つきだ!」

ゼバディは深く息を吸い、静かに語り始めた。

「兄弟たち、私たちの多くは教師となって、人を教えようとします。しかし、ヤコブが言うように、私たちは皆、多くの過ちを犯すものです。もし、言葉で過ちを犯さない人がいるなら、その人は完全な人であり、全身をも制御できるでしょう。」

人々は黙り、争っていた二人も顔を上げた。ゼバディは続けた。

「馬の口に手綱をはめると、その体全体を御することができます。また、船はどんなに大きくても、強い風に吹かれても、舵取りの小さなかじ一つで進む方向が決まります。同じように、舌は小さな器官ですが、大きなことを言い、大きな力を発揮するのです。」

リブカが頷き、ヨナタンは眉をひそめた。ゼバディは彼らを見つめ、真剣な面持ちで言った。

「舌は火のようなものです。ほんの小さな火花が大きな森を焼き尽くすように、舌もまた、私たちの全身を汚し、人生を破壊する力を持っています。それは悪の力に満ち、死に至らせる毒さえもっています。」

エリアスが驚いたように目を見開いた。ゼバディはさらに力強く語る。

「私たちは同じ舌で神を賛美し、また同じ舌で神にかたどって造られた人々を呪います。兄弟たち、これはあってはならないことです。泉が同じ穴から甘い水と苦い水を湧き出させることはできません。いちじくの木がオリーブの実をならせず、ぶどうの木がいちじくを実らせることもできません。」

会堂の中は静まり返り、人々は自分の言葉を振り返っていた。争っていた二人は恥ずかしそうに目を伏せた。ゼバディは最後に、優しく語りかけた。

「知恵のある人は、柔和な行いによってその知恵を示します。ねたみや利己心があるところには、混乱とあらゆる悪の行いがあります。しかし、上からの知恵はまず純真であり、次に平和、寛容、温順、あわれみと良い実に満ちています。偽りがなく、平和をつくる人々によって、義の実が蒔かれるのです。」

その日、村の人々は互いの言葉に気をつけるようになった。争いは次第に消え、代わりに平和な会話が広がっていった。ゼバディは祈りながら、舌の力を改めて思い知らされたのだった。

「主よ、私の言葉が常にあなたの愛と真実を映すものとなりますように。」

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