聖書

詩篇74篇の物語 荒廃から希望への叫び

**詩篇74篇に基づく物語:荒廃からの叫び**

神殿はかつて、神の栄光で満ちていた。金色の燭台が柔らかな光を放ち、祭司たちの祈りが香の煙と共に天に昇った。人々は喜びと感謝をもって集い、神の御名を賛美した。しかし今、その聖なる場所は廃墟と化していた。

敵が来襲した日、炎が聖所を包み、彫刻された柱は斧で打ち砕かれた。異国の兵士たちが神の家を嘲りながら、偶像の旗を掲げた。彼らは祭壇を汚し、契約の箱があった至聖所にまで足を踏み入れ、神の御名を冒涜した。かつて賛美が響いていた場所には、今や破壊の音だけがこだましていた。

民の指導者であるアサフは、廃墟の中に立ち、胸を引き裂かれるような思いで祈った。

「主よ、なぜあなたは私たちを永遠に見捨てられるのですか? なぜあなたの怒りの煙が立ち上り続けるのですか?」

彼の目には、かつての栄光の記憶と、現在の惨状が交互に浮かんだ。神が紅海を二つに分け、ファラオの軍勢を滅ぼされたあの力はどこにあるのか。神が荒野で民を養い、岩から水を湧き出させられたあの御手は、今なぜ動かないのか。

しかしアサフは、ただ嘆くだけではいなかった。彼は神の約束を思い起こした。

「主は私の王、昔から救いを働かれる方。」

彼は荒れ果てた地を見つめながら、静かな確信を抱き始めた。敵は確かに強大だったが、神こそが天地を造られた方だ。海の怪物(レビヤタン)を打ち砕き、太陽と月を定められたのは神である。この方に、不可能はない。

「神よ、立ち上がってください。あなたの御名を嘲る者に立ち向かってください。鳩のように弱い民を、野獣の手から救い出してください。」

祈りながら、アサフは一筋の希望を見た。たとえ今は闇が覆っていても、神の義の光は必ず再び輝く。破壊された祭壇は再建され、沈黙した賛美は再び響き渡る。神は決してご自身の民を永遠に忘れない。

やがて、夕闇が迫る中で、アサフは静かに歌い始めた。

「主は私の岩、私の避け所。たとえ地の基が揺らぐとも、神こそがとこしえの拠り所。」

その声は、荒廃の中にあっても、確かな信仰の証として風に乗って広がっていった。

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