**詩篇10に基づく物語：神の正義を待ち望む者の祈り**

昔、エルサレムの都から遠く離れた小さな村に、ヨナタンという名の敬虔な青年が住んでいた。彼は幼い頃から神の教えを愛し、貧しい者や弱い者に手を差し伸べる優しい心を持っていた。しかし、その村は次第に悪しき者たちの支配下に落ち、不正と暴力がはびこるようになっていた。

ある日、村の広場でヨナタンは、裕福な商人シュムエルが貧しい農夫から土地を奪おうとする場面に遭遇した。シュムエルは狡猾な言葉で農夫を脅し、わずかな金で彼の畑を奪い取ろうとしていた。農夫は泣きながら抵抗したが、シュムエルの手下たちが彼を取り囲み、暴力で屈服させようとした。

「やめてください！」ヨナタンは思わず叫んだ。

シュムエルは冷たい笑みを浮かべ、ヨナタンを見下ろすように言った。「お前のような小僧に何ができる？神などいない。力こそがすべてだ。」

その言葉に、ヨナタンの胸は痛んだ。詩篇10篇の言葉が彼の心に響いた。

**「悪しき者は高ぶり、貧しい者を激しく責める。…彼らは心の中で『神は忘れた。顔を隠して、決して見ない』と言う。」**

確かに、神は今、沈黙しているように見えた。悪者たちはのさばり、正しい者は苦しんでいた。しかし、ヨナタンは祈り続けた。

「主よ、なぜ遠く離れてお立ちですか。苦難の時になぜ隠れておられるのですか。」

その夜、ヨナタンは孤独な祈りをささげた。彼の心は重かったが、詩篇の言葉が彼を支えた。

**「しかし、主は永遠に王であられます。…主よ、あなたは悩む者の願いを聞かれます。あなたは彼らの心を強くし、耳を傾けてくださいます。」**

それから幾日か過ぎたある朝、村に旅の預言者が現れた。彼は神の言葉を語り、不正を行う者たちに悔い改めを迫った。シュムエルは嘲るように笑ったが、預言者は静かに言った。

「神はすべてを見ておられる。悪しき者の繁栄はつかの間に過ぎない。」

その言葉が終わらないうちに、空は急に暗くなり、激しい風が吹き荒れた。人々は恐れおののき、シュムエルは突然の病に倒れた。医者を呼んだが、彼の体は日に日に弱っていった。

一方、ヨナタンと農夫たちは助け合い、奪われた土地を取り戻すことができた。村には再び平和が訪れ、人々は神の正義が遅れても必ず実現することを悟った。

ヨナタンは詩篇10篇の最後の言葉を深く心に刻んだ。

**「主よ、あなたはみ腕を上げ、弱い者の願いをかなえてくださいます。…主は世々限りなく王であられます。」**

神は沈黙しているようでも、決して見捨ててはおられない。悪が栄える時も、神の正義は必ず訪れる。ヨナタンはその信仰を抱き、これからも神に信頼して歩み続けることを誓ったのだった。