**出エジプト記23章に基づく物語**
エジプトの奴隷の軛から解放されたイスラエルの民は、荒野を旅しながら、約束の地へと向かっていた。モーセは神から与えられた戒めを民に伝え、彼らが正義と慈愛に満ちた民として生きるように導いた。その中でも、特に重要な教えが記されていたのが、出エジプト記23章の言葉であった。
ある日、モーセは民を集め、神の律法を読み聞かせた。
**「偽りのうわさを広めてはならない。悪人と結託して、不正な証人となってはならない」**
モーセの声は力強く、荒野の静寂の中に響き渡った。人々は息をひそめ、神の言葉に耳を傾けた。彼は続けた。
**「たとえ大勢が悪に傾いても、彼らに従って証言を曲げてはならない。また、争い事において、弱い者を虐げる者に味方してはならない」**
民の中には、かつてエジプトで虐げられた記憶がよみがえり、うなずく者もいた。神は、彼らがかつて味わった苦しみを他人に与えることを決して許さなかった。
さらにモーセは、隣人との関係について語った。
**「もし、あなたの敵の牛やろばが迷っているのを見たら、必ず彼のもとに連れ戻さなければならない。もし、あなたを憎む者のろばが荷物の下に倒れているのを見たら、見て見ぬふりをせず、必ず助け起こさなければならない」**
人々は驚き、互いの顔を見合わせた。敵でさえ助けるべきなのか? モーセは彼らの疑問を読み取り、静かに言った。
**「神は、すべての人を公平に裁かれる。敵であれ、友であれ、神の前ではすべての命は尊い。あなたがたが正しい行いをすれば、神は必ずそれを覚えておられる」**
そして、モーセは最も重要な教えを伝えた。
**「七年ごとに、土地を休ませなければならない。貧しい者があなたの残したものを食べ、野の獣が残り物を食べるようにしなさい。あなたがたがエジプトの地で奴隷であったことを忘れてはならない。だから、寄留者を虐げてはならない」**
民は深く考え込んだ。土地を休ませることは、収入が減ることを意味した。しかし、モーセは神の約束を伝えた。
**「もし、この戒めを守るなら、神はあなたがたを祝福し、敵を追い払い、約束の地で安住させてくださる」**
人々は心を一つにし、神の言葉を受け入れた。彼らは、神が与えられた律法が、単なる規則ではなく、神との契約であり、愛と正義に満ちた生き方であることを悟ったのである。
こうして、イスラエルの民は神の導きに従い、約束の地へと進んでいった。彼らは、この律法を子孫に伝え、神の正義と慈愛が永遠に続くことを証ししていったのである。