聖書

「知恵と正義の道:エルサレムの物語」

**知恵と正義の道**

ある日のこと、エルサレムの丘に朝日が昇り、金色の光が街を包み込んでいました。人々が市場へと向かう中、一人の年老いた賢者、エリアムは神殿の階段に座り、神の言葉を静かに思い巡らせていました。彼の心には、ソロモン王の箴言が響いていました。

**「王の心は主の手の中にあって、水の流れのようだ。主はそれをみこころのままに向けられる。」(箴言21:1)**

エリアムは深く頷きました。確かに、神はすべての王の心を導かれる。たとえ王が自らの力に頼っても、真の支配者は主なる神である。その時、騒がしい声が聞こえてきました。見ると、若者たちが争いを始めていたのです。

「お前の取引は不正だ! 量りをごまかしている!」
「何を言うか! お前こそ嘘つきだ!」

エリアムはゆっくりと立ち上がり、杖をついて二人の間に割って入りました。

**「すべての道は人が見て正しいと見えても、その終わりは死に至る道である。」(箴言21:2)**

彼の声は静かながらも力強く、若者たちは黙り込みました。エリアムは続けます。

「お前たちは、自分が正しいと思い込んでいる。しかし、神の目にはどう映るか? 主は心を見抜かれる。偽りや高ぶりは、やがて滅びをもたらすのだ。」

若者たちは俯き、悔い改めるように頭を下げました。エリアムは微笑み、彼らに和解を勧めました。

その頃、王宮ではゼデキヤ王が重臣たちと議論をしていました。隣国からの脅威が迫り、戦うべきか、和平を結ぶべきか、意見が分かれていたのです。

**「正しいことを行うことと、いけにえをささげることとは、主の前に優る。」(箴言21:3)**

王はふと、この言葉を思い出しました。彼は祈り、神の導きを求めました。そして、戦争を選ぶのではなく、まず正義と平和を追求することを決意したのです。

一方、街の片隅では貧しい寡婦が、不正な商人に土地を奪われ、泣いていました。彼女の祈りは天に届き、神は動かれたのです。

**「高ぶる目とおごる心──悪しき者のともしびは、これらである。」(箴言21:4)**

その商人は、富と権力を誇り、人を踏みにじっていました。しかし、ある日、彼の商売は突然の災いで崩れ去り、彼はすべてを失いました。人々は驚き、神の裁きの確かさを悟ったのです。

エリアムはこれらの出来事を見て、人々に語りかけました。

**「悪者の計画は罪へと導くが、正しいことを語る者は救いを得る。」(箴言21:5)**

「神は正義を愛し、偽りを憎まれる。富を追い求めるよりも、主の道を歩むことが真の知恵なのだ。」

人々は彼の言葉に耳を傾け、心を改め始めました。そして、エルサレムには再び神への畏れが広がっていったのです。

夜、エリアムは星空を見上げ、感謝の祈りを捧げました。

**「主を畏れることは、命の泉である。これによって死のわなを免れることができる。」(箴言21:31)**

彼は確信していました。どんなに力ある者でも、神の御心なくしては何も成し得ない。真の勝利は、主に信頼する者に与えられる、と。

こうして、神の知恵はエルサレムに満ち、人々は正義と謙遜の道を歩み始めたのでした。

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