**ガラテヤ人への手紙６章に基づく物語**

エーゲ海の風がそよぐ、小アジアのガラテヤ地方。緑豊かな丘陵地帯に点在する教会には、パウロの教えを慕う信徒たちが集まっていた。しかし、彼らの間には緊張が漂っていた。ある者はモーセの律法を厳格に守るべきと主張し、ある者はキリストの恵みによる自由を説いた。互いの考えの違いが、愛の交わりに影を落としていた。

ある安息日の朝、エクレシア（教会）の庭では、信徒たちが集まって話し合っていた。年配のユダヤ人クリスチャン、エリエゼルは、若い信徒たちに割礼の重要性を熱心に語っていた。「神の民としての証しは、この契約の印なくしては成り立たない」と。一方、ギリシャから改宗したステファノスは眉をひそめ、「キリストは既にすべてを成し遂げられた。私たちはもはや律法の奴隷ではない」と反論した。

その時、一人の男が静かに集まりに近づいた。彼の名はティモテオス。パウロの教えを忠実に伝える弟子の一人だった。人々は彼の到着に気づき、議論をやめて注目した。ティモテオスは深く息を吸い、パウロからの手紙を読み始めた。

**「兄弟たちよ。もしだれかがあやまちに陥っていることがわかったなら、霊の人であるあなたがたは、柔和な心でその人を正してあげなさい。また、自分自身も誘惑に陥らないように気をつけなさい。互いの重荷を負い合いなさい。そうすれば、あなたがたはキリストの律法を全うすることになるのです。」**

彼の言葉は、まるで渇いた地に降る雨のように、人々の心に染み渡った。エリエゼルはうつむき、ステファノスは胸に手を当てて考え込んだ。

ティモテオスは続けた。

**「自分は偉いのだと思い込んでいる人がいたら、その人は自分を欺いているのです。なぜなら、ほかの人と比べて自分を良く見せても、それは何の値打ちもないからです。それぞれが自分の行いを検分すべきです。そうすれば、自分自身について誇れるものが出てくるかもしれません。しかし、他人と比べる必要はありません。それぞれが自分の重荷を担うのです。」**

庭にいた農夫のマルコスは、汗で汚れた手をこすりながら頷いた。彼は日々の労働で疲れていたが、隣人の畑を助けることを決して怠らなかった。ティモテオスの言葉は、彼の生き方を肯定するものだった。

そして、ティモテオスは最後に力強く語った。

**「良いことをして疲れ果ててはいけません。時が来れば、実を刈り取るでしょう。ですから、機会があるたびに、すべての人に、特に信仰の家族に対して善を行いましょう。」**

その言葉を聞いて、信徒たちの顔に穏やかな決意が浮かんだ。エリエゼルはステファノスに歩み寄り、握手を求めた。「私たちは互いを裁くのではなく、支え合うべきだった」と彼は言った。ステファノスも笑顔で応え、「キリストの愛こそが、私たちを結びつける絆です」と答えた。

日が暮れ、教会の庭には静けさが戻った。しかし、人々の心には新たな火が灯っていた。彼らはもう、律法か恵みかという議論に囚われるのではなく、キリストに倣って互いに仕え合う道を選んだのだった。

**「私たちは、良いことを行うのに飽きてはいけません。失望せずに続けていれば、時が来て実を刈り取ることになります。だから、機会があるかぎり、すべての人に、特に信仰によって家族となった人たちに、善を行いましょう。」**

こうして、ガラテヤの教会は再び一つとなった。彼らが蒔いた愛と奉献の種は、やがて豊かな実を結び、神の国を証しするものとなっていったのである。