聖書

「エフェソスへの愛と光の教え」

**愛と光の中を歩む**

ある日のこと、エフェソスの教会に集う信徒たちのもとに、長老ヨハネからの手紙が届いた。人々はその巻物を開き、深い愛情と厳しい警告に満ちた言葉に耳を傾けた。

「子たちよ、これらのことを書き送るのは、あなたがたが罪を犯さないようになるためです。しかし、もしだれかが罪を犯したなら、私たちには父のもとに弁護者、義なるイエス・キリストがおられます。」

ヨハネの声は、まるで優しい父親のように響いた。彼は、キリストの贖いの血潮がすべての罪を洗い流すことを確信していた。しかし同時に、神の戒めを軽んじる者たちに対しても、厳しいまなざしを向けていた。

「『神を知っている』と言いながら、その戒めを守らない者は、偽り者です。」

教会の中には、知識を誇りながら、愛の実践を忘れる者たちがいた。彼らは「光の中にいる」と主張したが、兄弟を憎む心を抱いていた。ヨハネはそのような者たちを鋭く戒めた。

「兄弟を愛する者は、光の中におり、つまずくことがありません。しかし、兄弟を憎む者は、闇の中におり、闇の中を歩んでいるのです。」

ある夜、教会の一角で、二人の信徒が激しく言い争っていた。一人は貧しい寡婦を助けるべきだと主張し、もう一人は「信仰さえあれば十分だ」と冷たく突き放した。ヨハネはその場に静かに近づき、彼らの間に立った。

「愛する者たち、互いに愛し合うことこそ、神の戒めです。光の中を歩むとは、言葉だけでなく、行いと真実をもって生きることです。」

彼の言葉は、二人の心に深く刺さった。寡婦を助けるべきだと主張した信徒は涙を流し、もう一人は悔い改めて彼の手を握った。

さらにヨハネは、この世の誘惑に警戒するよう呼びかけた。

「世にも世のものにも、愛してはなりません。もしだれかが世を愛しているなら、父に対する愛はその人のうちにありません。」

当時、エフェソスは富と快楽に満ちた町だった。市場では異教の神々を讃える祭りが行われ、人々は欲望のままに生きていた。教会の中にも、こうした風潮に染まる者たちが現れ始めていた。

ある商人は、キリストを信じながらも、不正な取引で富を積んでいた。彼は「信仰と商売は別だ」と言い訳したが、ヨハネは彼を静かに諭した。

「神の御心を行う者は、永遠に生き続けます。しかし、世の欲望に従う者は、やがて滅びます。」

商人は初め反抗的だったが、次第に自分の過ちに気づき、不正に得た富を貧しい人々に分け与えることを誓った。

最後に、ヨハネは終わりの時について語った。

「小さな子たちよ、今が終わりの時です。」

彼は、反キリストの霊がすでに働いていることを警告した。教会の中から離れていく者たちがいたが、ヨハネは真の信徒たちにこう励ました。

「あなたがたは、聖なる方から油注がれを受けているので、すべてを知っています。」

夜明けが近づき、人々はヨハネの言葉を胸に、それぞれの家路についた。彼らの心には、神の愛と光が深く刻まれていた。そして、互いに愛し合い、戒めを守り、世の誘惑に打ち勝つ決意が新たにされたのだった。

「御子に結ばれている人は、この世に打ち勝つからです。」

こうして、エフェソスの信徒たちは、真の信仰と愛のうちを歩み続けた。ヨハネの言葉は、時代を超え、今も私たちの心に響き続けている。

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