聖書

エズラ記1章 キュロス王の宣言と捕囚の民の帰還

**エズラ記第1章:キュロス王の宣言と捕囚の民の帰還**

バビロンの都は、金色の朝日を浴びて輝いていた。巨大な宮殿の柱廊には、遠くペルシャの地から征服を成し遂げたキュロス王の旗印が風に揺れていた。その日、王は深い思索にふけりながら、玉座の間に座していた。彼の心には、不思議な思いが巡っていた。

「なぜ、私はこのバビロンを征服したのだろうか?」

彼は、かつてネブカドネザル王がエルサレムから奪い、バビロンの神殿に納めたユダの民の神の器を思い出した。その時、彼の胸に主なる神の声が響いた。

「わたしは天と地を造られた主である。わたしは、わたしの民イスラエルを解放するために、あなたキュロスを選んだ。彼らをエルサレムに帰らせ、わたしの家を再建せよ。」

キュロスは震えるような感動を覚えた。彼はすぐに書記官を呼び、全王国に布告を出すように命じた。

**「ペルシャの王キュロスはこう宣言する。天の神、主は、地のすべての国々を私に与えられた。そして、ユダのエルサレムに御自分のための宮を建てるように、私に命じられた。あなたがたのうち、主の民である者はだれでも、エルサレムに上って行きなさい。主なる神が共におられるように。そして、主の宮を再建せよ。」**

この布告は、王国の隅々にまで伝えられ、長く捕囚の苦しみの中にいたユダの民の心に希望の炎を灯した。老人たちは涙を流し、若者たちは喜びの声を上げた。

「ついに、主が私たちを顧みてくださった!」

キュロス王はさらに、ネブカドネザルがエルサレムから奪い取った主の神殿の器物をすべて返還するように命じた。金の皿、銀の杯、香炉など、一つ一つが丁寧に数えられ、ユダの指導者であるシェシュバツァルに託された。

こうして、主の御心によって、捕囚の民は故郷へと帰る旅路についた。彼らは荒野を越え、山々を越え、約束の地を目指して進んだ。その行く手には、荒廃したエルサレムの城壁が待ち受けていたが、彼らの心には、主への信仰と、再建への決意が燃えていた。

**「主は私たちを散らされたが、再び集めてくださる。主の慈しみは永遠に絶えることがない。」**

こうして、預言者エレミヤが語った70年の捕囚の時が終わり、新しい時代の幕が開けたのである。

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