**エステル記10章:王の栄光とモルデカイの偉大さ**
ペルシャ帝国の広大な領土を治めるアハシュエロス王は、その権威と富を国中に行き渡らせた。王の統治は力強く、彼の名は海の果てまで響き渡った。王は、ユダヤ人のモルデカイを宰相として立て、彼をすべての大臣たちの上に置いた。モルデカイは王に次ぐ者となり、その知恵と正義は国中の民に称えられた。
モルデカイは、かつてハマンの陰謀からユダヤ人を救い、王の信頼を得た人物である。彼は常に同胞を思い、神の民の平安を願いながら国政に携わった。王宮の広間で裁きを下すとき、彼の言葉には威厳と慈愛が満ちていた。大臣たちは彼の前にひれ伏し、民は彼を「救いの器」として仰いだ。
ある日、王はモルデカイを呼び寄せ、こう言った。
「モルデカイよ、お前の働きはこの王国の礎となった。私はお前の忠誠と知恵に心から感謝する。」
モルデカイは深く頭を下げ、静かに答えた。
「王よ、この栄誉は私のものではなく、天の神がこの国を導かれた証です。どうか、私が正義と真実をもって民に仕えることができますように。」
王は彼の謙遜な心に感動し、さらに彼に権威を与えた。モルデカイは王の印璽を帯び、王国のすべての州に布告を発する権限を得た。彼の命令は迅速に伝えられ、どの州の総督も彼の言葉に従った。
ユダヤ人たちは、モルデカイの高挙を見て喜び、神を賛美した。
「主は私たちを捨てず、敵の手から救い出してくださった。モルデカイを通して、神の約束は真実であった!」
彼らは安堵と感謝のうちに日々を過ごし、エルサレムの再建を思いながら、神の導きを祈った。
モルデカイは、王の右腕として国を治めながらも、常に神の御前にひざまずいた。彼は同胞に手紙を送り、こう記した。
「私たちは異国の地にあっても、神の民として歩まねばなりません。正義を愛し、弱き者を助け、主の御名を崇めましょう。」
こうして、ペルシャ帝国は繁栄し、ユダヤ人たちは平和のうちに暮らした。モルデカイの名声はますます高まり、彼の物語は代々語り継がれることとなった。
**終わり**