**アモス書5章に基づく物語**
**荒野の預言者アモス**
北イスラエルの地は、かつてない繁栄を誇っていた。サマリアの街には壮麗な宮殿が立ち並び、市場には異国の珍しい品々が溢れ、人々は贅沢な暮らしを楽しんでいた。しかし、その繁栄の陰で、貧しい者たちは虐げられ、正義は曲げられていた。
そのころ、南のユダの地、テコアの荒野で羊を飼う一人の男がいた。彼の名はアモス。粗末な衣をまとい、日焼けした顔には深い皺が刻まれていた。彼は王宮の預言者ではなく、ただ神の声に従う者であった。ある夜、燃えるような幻が彼に臨んだ。主の声が雷のように響いた。
**「イスラエルの家に向かって叫べ。彼らは正義を苦よもぎに変え、義の実を地に投げ捨てた!」**
アモスは震えた。神の怒りは激しく、その裁きは近づいていた。
**サマリアへの警告**
翌日、アモスは羊の群れを家族に託し、北へと向かった。サマリアの街に入ると、彼は広場に立ち、力強い声で叫んだ。
**「聞け、イスラエルの民よ! 主はこう言われる。『あなたがたは祭りを愛し、犠牲をささげて満足している。しかし、わたしはあなたがたの歌を喜ばない。正義を水のように、恵みの業を絶えることのない川のように流れさせよ!』」**
人々は嘲笑った。「この田舎者が何を言うか」「王宮の預言者たちは繁栄を約束しているというのに」。
しかしアモスは続けた。
**「あなたがたは『主の日』を待ち望んでいる。しかし、それは暗闇であって光ではない。まるが、獅子を避けて逃げた者が、今度は熊に出会い、家に入って手を壁につけたら、蛇に噛まれるようなものだ!」**
人々の笑い声はやみ、不安が広がった。
**ベテルでの対決**
アモスはさらに北へ進み、ベテルの聖所に足を踏み入れた。そこは金で飾られた祭壇が輝き、祭司たちが豪華な衣をまとって犠牲をささげていた。大祭司アマツヤはアモスをにらみつけ、王への反逆者として糾弾した。
**「預言者よ、ユダへ帰れ。そこで糧を得よ。ベテルでは預言するな。ここは王の聖所、王国の神殿だ!」**
アモスは静かに答えた。
**「わたしは預言者でも、預言者の弟子でもない。ただ、羊を飼い、いちじく桑を育てる者だ。しかし、主がわたしに『行って、わが民イスラエルに預言せよ』と言われた。あなたがたは貧しい者を踏みつけ、賄賂を取り、正しい者を訴えている。それゆえ、主は言われる。『あなたの妻は街中で遊女となり、あなたの子供たちは剣に倒れ、あなたは汚れた地で死に、イスラエルは必ず捕囚として連れ去られる』と。」**
アマツヤの顔が蒼白になった。
**裁きの宣告**
アモスは最後に、神の裁きを宣言した。
**「主を求める者たちよ、悪を憎み、善を愛せ。そうすれば、あなたがたは生き残るかもしれない。しかし、もし悔い改めなければ、主は火のようにイスラエルを焼き尽くす。たとえ天に昇ろうと、海の底に潜ろうと、主の手はあなたがたを捕らえる!」**
彼の言葉は、やがて現実となった。数年後、アッシリアの大軍が北イスラエルを襲い、国は滅び、人々は遠く離れた地に散らされた。
しかし、アモスの叫びは消えなかった。
**「主を求めよ。そして生きよ。」**
その言葉は、時代を超え、今日にまで響き続けている。