**イザヤ書56章に基づく物語:神の家の広がり**
エルサレムの丘に夕日が沈み、金色の光が神殿の大理石の柱を優しく照らしていた。人々が一日の労苦を終え、家路につく頃、預言者イザヤは神の声に耳を傾けていた。彼の心には、神の約束が炎のように燃え上がっていた。
「わたしの救いが実現し、わたしの義が現れる時が近づいている。」
神の声は風のように町中に広がり、異邦人の地にまで届いた。かつて神の民とされていなかった者たち、エジプトの商人、エチオピアの戦士、異国の地で孤独に生きる者たちの耳にも、その言葉は響いた。
### **異邦人エフラタの決意**
エフラタはエチオピアの高官だったが、エルサレムを訪れた際、イスラエルの神に深く心を動かされた。彼は安息日を守り、神の契約を堅く保つことを誓った。しかし、周囲のユダヤ人たちは冷ややかな目で彼を見た。
「異邦人が神の民の集いに加わるなど、許されぬことだ。」
ある安息日、エフラタが神殿の庭で祈っていると、祭司たちが彼を遮った。
「ここは聖なる場所だ。お前のような者は出て行け。」
エフラタの胸には悲しみが広がった。しかし、その時、預言者イザヤが彼の前に現れ、神の言葉を告げた。
**「主はこう言われる。『安息日を守り、わたしの契約を選ぶ異邦人を、わたしは喜んで迎える。わたしの家は、すべての民の祈りの家と呼ばれる。』」**
エフラタの目に涙が浮かんだ。神は彼を見捨てず、約束してくださったのだ。
### **宦官シドキヤの苦悩と希望**
一方、宮廷に仕える宦官シドキヤは、自分には子孫が残せないことを嘆いていた。ユダヤの律法では、宦官は神の集会に加わることを禁じられていた。彼は神殿の外でうつむき、寂しげに祈っていた。
「主よ、私は欠けた者です。どうか私を憐れんでください。」
すると、イザヤが彼に近づき、神の声を伝えた。
**「主はこう言われる。『子孫のない者でも、わたしのために正しく生きるなら、わたしは彼に永遠の名を与え、わたしの家で栄誉ある地位を授ける。』」**
シドキヤの心に喜びが溢れた。神の愛は、すべての境遇を超え、すべての民を包み込むのだ。
### **神の家の完成**
時が経ち、エルサレムの神殿には異邦人やかつての疎外された者たちが集い始めた。彼らは共に祈り、神の恵みを讃えた。イザヤは人々に向かって宣言した。
**「見よ、神はすべての民を招かれる。羊飼いが群れを集めるように、神は失われた者を連れ帰られる。わたしの家は、すべての民の祈りの家となるのだ!」**
人々は感動に打ち震え、神の広大な愛にひれ伏した。もはや異邦人も、宦官も、かつての孤独な者たちも、神の民として一つにされた。
こうして、イザヤの預言は実現し、神の国はすべての民に開かれた。主の慈しみは永遠に変わらず、その約束は今日も生きている。
**(終わり)**