聖書

ノアの子孫と諸国の起源 創世記10章

**創世記第10章:ノアの子孫と諸国の起源**

大洪水の後、ノアとその三人の息子たち――セム、ハム、ヤペテ――は地に満ち、子孫を増やしていった。神の祝福によって、彼らは新しい世界に散らばり、それぞれの国と言語、民族を形作っていったのである。

### **ヤペテの子孫**
ヤペテの子らは、海沿いの地に住み、広大な領土を治めた。彼らは船乗りや交易に長け、遠くまでその文化を広めた。ヤペテの七人の息子――ゴメル、マゴグ、マダイ、ヤワン、トバル、メセク、ティラス――は、それぞれが強大な氏族の祖となった。

ゴメルの子孫は北方の山岳地帯に定住し、勇敢な戦士として知られた。マゴグの一族は荒々しい気性で恐れられ、後に預言者エゼキエルによって終わりの日の戦いに関わると預言される。ヤワンの子らはギリシャの島々に広がり、哲学と芸術の民として栄えた。彼らの港町は交易でにぎわい、異国の珍品が行き交った。

### **ハムの子孫**
ハムの四人の息子――クシュ、ミツライム、プテ、カナン――は、南の灼熱の地や肥沃なナイル川流域、そして後にイスラエルの民と対立するカナンの地にまで広がった。

クシュの子孫はエチオピアの高原に王国を築き、黄金と香辛料で富んだ。その中でもニムロデは、かつてないほどの強大な王として名を轟かせた。彼は最初の勇士であり、バベルやニネベなどの大都市を建設した。人々は彼を「神の前に力ある狩人」と呼んだが、その野心は後に神の怒りを買うこととなる。

ミツライムの子らはエジプトの地に定住し、ピラミッドを築き、高度な文明を発展させた。しかし、彼らの知識はやがて傲慢を生み、異教の神々を崇拝するようになった。プテの一族はリビアの砂漠の民となり、カナンの子孫はヨルダン川の西側に広がり、後にイスラエルの民が約束の地に入る際に敵対することとなる。

### **セムの子孫**
セムの子孫は、神の約束を受け継ぐ選ばれた系譜であった。その中からエベルが現れ、彼の名は「ヘブル人」の由来となった。セムの子らは東方の山地に広がり、やがてアブラハムの祖先となるアルパクシャドを生んだ。

エラムはペルシャの地に王国を築き、アシュルはアッシリアの都ニネベを拡張した。しかし、最も重要なのはアルパクシャドの系譜で、彼の子孫からはテラが生まれ、その子アブラム(後のアブラハム)が現れる。このアブラムこそ、神が「すべての民族の祝福となる」と約束した人物であった。

### **諸国の起源と神の計画**
こうして、ノアの子孫たちは地に満ち、七十の国々が生まれた。それぞれの民は独自の言葉と文化を持ち、神が与えた地に住んだ。しかし、人々の高慢はやがてバベルの塔の混乱を招き、言語が分かたれることになる。

それでも、神の御心は変わらなかった。セムの系譜を通して、救いの道は守られ、ついにアブラハムが選ばれる。彼を通して、すべての民族を贖うメシアへの道が開かれるのである。

こうして創世記第10章は、神が諸国の起源を定め、ご自身の民を準備する壮大な計画の始まりを語るのであった。

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