**ホセア書12章に基づく物語**
ユダの荒野を吹き渡る風は、乾いた砂を巻き上げ、遠くに連なる山々を霞ませていた。その荒れ野の只中に、預言者ホセアは立っていた。彼の目には、神の民イスラエルの背信の歴史が焼きついており、心は痛みで満たされていた。主はホセアに語りかけられた。
**「彼らは油で塗られたように、わたしの言葉をすり抜ける。しかし、わたしは彼らの父ヤコブのことを思い起こさせる。」**
ホセアは深く息を吸い込み、神の言葉を民に伝えるため、近くの町へと歩き出した。道すがら、彼はかつての族長ヤコブのことを思い巡らした。
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**ヤコブの物語**
遠い昔、ベエル・シェバの地に住んでいたヤコブは、兄エサウを欺き、長子の祝福を奪った。そのため、兄の怒りを恐れて故郷を逃れ、ハランの地へと向かった。荒野をさまよう彼の心は不安に満ちていたが、その夜、主は彼に夢を見せられた。
天に届く階段が地から伸び、神の御使たちが上り下りしている。そして、主ご自身がヤコブの傍らに立ち、こう宣言された。
**「わたしはあなたの父アブラハムの神、イサクの神である。あなたが今横たわっているこの地を、あなたとあなたの子孫に与える。見よ、わたしはあなたと共にいる。」**
ヤコブは目を覚ますと、震える声で叫んだ。「これはまことに神の家だ。そして、これは天の門だ!」 彼はその場所をベテル(神の家)と名付け、石に油を注いで記念とした。
しかし、ヤコブの試練は終わらなかった。ハランでは叔父ラバンに欺かれ、七年働いて望んだラケルではなく、姉のレアを妻として与えられた。さらに六年の間、ラバンは彼の報酬を十度も変えた。しかし、主はヤコブを守り、ついには彼を富ませ、家族と共にカナンの地へ帰還させた。
そして、ヤブクの渡しで、ヤコブは一人の者と夜通し格闘した。彼は必死に食い下がり、「祝福してくださるまで離しません!」と叫んだ。すると、その者は彼の腿の関節を打ち、こう言った。
**「あなたの名はもうヤコブではなく、イスラエル(神と戦う者)だ。あなたは神と人とに勝った。」**
こうしてヤコブは、神の前にへりくだり、祝福を受けた。彼はかつて欺きの道を歩んだが、主は彼を鍛え、真の信仰者へと変えられたのだ。
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**ホセアの警告**
ホセアは町の広場に立ち、群衆を見渡しながら叫んだ。
**「イスラエルよ、聞け! お前たちの父ヤコブは、弱くとも神にすがり、祝福を受けた。しかし、今のお前たちはどうだ? 欺きと高慢に満ち、主を忘れ、バアルにひれ伏す!」**
人々の中から冷笑が漏れた。「預言者め、何を騒ぐ? 我々は豊かで安泰だ。アッシリアと同盟を結び、エジプトの力を頼りにしている。神などいなくとも、我々は栄える!」
ホセアの目に涙が浮かんだ。
**「お前たちは油商人のように、偽りの秤を使い、貧しい者を虐げている。主は言われる。『わたしはお前たちをエジプトに連れ帰り、荒野で裁く。』 悔い改めよ! 慈愛と正義を追い求め、神を待ち望め!」**
しかし、人々は耳を貸さず、去っていった。
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**神の約束**
夜、ホセアは孤独の中、主に祈った。すると、静かな声が響いた。
**「彼らがどれほど背いても、わたしの愛は消えない。わたしは彼らを癒し、再びわが民とする日が来る。」**
ホセアはその約束を胸に、再び歩き始めた。たとえ今は民が聞かなくとも、神の言葉は決して空しく帰らない。ヤコブが試練を通して神に出会ったように、イスラエルもいつか、主の元に立ち返る――その希望を抱きながら。
こうして、ホセアの警告と神の慈愛の物語は、世代を超えて語り継がれていった。