**知恵の道を歩む者**
ある日のこと、エルサレムの丘に朝日が昇り、金色の光が町全体を包み込んだ。市場では商人たちが品物を並べ始め、人々の賑やかな声が響いていた。その中に、ヨナタンという名の若者がいた。彼は父から受け継いだ小さな織物屋を営んでおり、真面目に働いていたが、生活は決して楽ではなかった。
ある日、町の広場で長老たちが集まり、人々に知恵の言葉を説いていた。ヨナタンも耳を傾けると、一人の長老がこう語った。
**「良い名は大いなる富にまさり、恵みは銀や金よりも望ましい。」**
その言葉はヨナタンの心に深く刺さった。彼はこれまで、富を得るためには手段を選ばずともよいと考えていたが、この言葉は彼の価値観を揺るがした。
その夜、ヨナタンは家に帰り、父が残した聖書を開いた。そこにはこう書かれていた。
**「富む者と貧しい者は共に世に生きる。これを造られたのは主である。」**
ヨナタンは思った。「もし神がすべてを造られたのなら、貧しさも富も、神の御心の中にあるのか?」
翌日、彼は隣人である貧しい寡婦リベカの家を訪ねた。彼女は夫を亡くし、幼い子を一人で育てながら、苦しい生活を送っていた。ヨナタンはこれまで、彼女の苦境を知りながらも、自分のことで精一杯で手を差し伸べられずにいた。しかし、この日は違った。
「リベカさん、私の店で働いてみませんか? 織物の技術を教えます。」
リベカは驚き、涙を浮かべて感謝した。それから数か月後、彼女は見事な織物を作れるようになり、ヨナタンの店はさらに繁盛した。彼は利益の一部を貧しい人々に分け与え、町の人々から信頼されるようになった。
ある日、町の有力者であるアブナーがヨナタンの店を訪れた。彼は高価な織物を大量に注文したいと言い、代金を前払いすると申し出た。しかし、ヨナタンは彼の目に不正な光を見た。
**「悪い者の陰謀には近寄るな。彼らの道に入るな。」**
ヨナタンは申し出を断った。アブナーは激怒し、「お前の店を潰してやる!」と叫んで去っていった。
数日後、アブナーは不正な取引で捕らえられ、町から追放された。人々はヨナタンの正しい判断を称賛した。
**「目はさとくあれ。わたしの知識を保て。そうすれば、あなたの魂は楽しく、あなたの唇は正しいことを語る。」**
ヨナタンは神の知恵に従い、誠実に歩むことの大切さを悟った。彼の店はますます繁栄し、彼は貧しい者や孤児を助けるための家を建てた。
やがて、ヨナタンの評判は国中に広まり、王さえも彼を呼び寄せて顧問とした。しかし、彼は変わらず謙虚に神に従い、こう祈った。
**「主よ、私を正しい道に導き、知恵を与えてください。富や名声ではなく、あなたの御心に従って歩めますように。」**
こうして、ヨナタンは知恵の道を歩み続け、その生涯を通して神の栄光を現したのである。
**「謙遜と主を恐れることは、富と誉れと命に至る。」**
(箴言22章に基づく物語)