**終わりの時の預言**
イエスがエルサレムの神殿から出て行かれるとき、弟子のひとりがイエスに言った。「先生。ご覧ください。なんとすばらしい石、なんとすばらしい建物でしょう。」
イエスは振り返り、深い悲しみをたたえた目で神殿を見つめられた。そして、静かに言われた。「この大きな建物を見ているのか。しかし、ここでは石がくずされずに、ほかの石の上に残ることはない。」
弟子たちは驚き、イエスをもっと詳しく尋ねた。「先生、いつそのようなことが起こるのでしょうか。また、その時が来る前には、どんな前兆があるのでしょうか。」
イエスはオリーブ山に座り、神殿を見下ろしながら、弟子たちに語り始められた。
**惑わされないように**
「気をつけなさい。だれにも惑わされないようにしなさい。多くの者がわたしの名を名乗って現れ、『わたしがそれだ』と言って、多くの人を惑わすだろう。戦争のうわさや、戦争の騒ぎを聞いても、慌ててはいけない。そういうことは必ず起こるが、まだ終わりではない。民は民に、国は国に敵対して立ち上がり、あちこちで地震があり、ききんが起こる。これらは産みの苦しみの始まりにすぎない。」
**迫害と忍耐**
「しかし、あなたがたは自分自身に気をつけなさい。人々はあなたがたを議会に引き渡し、会堂で打ちたたき、わたしのために総督や王たちの前に立たせる。それは、あなたがたが彼らにあかしをするためである。まず、福音があらゆる民に宣べ伝えられなければならない。そして、連れていかれるとき、何を話そうかと心配してはならない。そのとき与えられることを話せばよい。話すのはあなたがたではなく、聖霊だからだ。」
**終わりの時の苦難**
「兄弟は兄弟を、父は子を死に引き渡し、子は両親に逆らって立ち、彼らを殺すだろう。また、わたしの名のために、すべての人に憎まれるようになる。しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる。」
「『荒らす憎むべきもの』が、聖なる場所に立つのを見たら──読者は悟れ──そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げなさい。屋上にいる者は、家の中の物を取りに出ようとして下に降りてはならない。畑にいる者は、上着を取りに戻ってはならない。その日には、身ごもっている女たちと乳飲み子を抱いている者たちは不幸だ。このことが冬に起こらないように祈れ。その日には、神が天地を造られた初めから今まで、またこれから先にも、決してないような苦難が来るからだ。もし主がその期間を短くしてくださらなければ、だれひとり救われないだろう。しかし、主は選ばれた者たちのために、その期間を短くしてくださる。」
**人の子の再来**
「そのとき、もしだれかが『見よ、ここにキリストがいる』とか、『あそこにいる』と言っても、信じてはならない。にせキリストたちや、にせ預言者たちが現れ、できれば選民をも惑わそうとして、しるしや不思議なことを行うからだ。だから、あなたがたは気をつけていなさい。わたしは前もってすべてのことをあなたがたに話しておく。」
「しかし、その苦難の後、太陽は暗くなり、月は光を放たず、星は天から落ち、天の万象は揺り動かされる。そのとき、人の子が大いなる力と栄光を帯びて雲に乗って来るのを、人々は見る。そして、人の子は御使いたちを遣わし、地の果てから天の果てまで、四方から選ばれた者たちを集める。」
**いちじくの木から学べ**
「いちじくの木からこのたとえを学びなさい。その枝が柔らかくなり、葉が出ると、夏の近いことがわかる。同じように、これらのことが起こるのを見たら、人の子が戸口まで近づいていると知りなさい。まことに、あなたがたに告げます。これらのことが全部起こるまで、この時代は過ぎ去りません。天地は滅びます。しかし、わたしのことばは決して滅びることはありません。」
**目を覚ましていなさい**
「しかし、その日、その時がいつなのかは、だれも知らない。天の御使いたちも子も知らない。ただ父だけが知っておられる。気をつけて、目を覚ましていなさい。その時がいつなのか、あなたがたにはわからないからだ。それは、家をあける主人が、しもべたちにそれぞれ仕事を任せ、門番には目を覚ましているように命じて、旅に出るようなものだ。だから、目を覚ましていなさい。いつ家の主人が帰って来るのか、夕方か、夜中か、にわとりの鳴くころか、明け方か、あなたがたにはわからないからだ。主人が突然帰って来て、あなたがたが眠っているのを見つけるかもしれない。わたしがあなたがたに言うことは、すべての人に言うのだ。目を覚ましていなさい。」
イエスのことばは厳かであり、弟子たちの心に深く刻まれた。彼らは、終わりの時がどのようなものであるかを悟り、いついかなるときにも主に従い続ける決意を新たにした。