**申命記28章に基づく物語:祝福と呪いの道**
荒野を越え、約束の地の目前に立つイスラエルの民。モーセは、神の言葉を胸に、老いた体に鞭打って民の前に立った。風が砂塵を巻き上げ、彼の白髪をなびかせる。民は静まり返り、神の律法を聞くために集まった。
「聞け、イスラエルよ。」モーセの声は渇いた大地に響く。「主は今日、あなたがたに祝福と呪いの道を示される。もし、あなたがたが神の御声に従い、すべての戒めを守るならば、天と地のすべての祝福があなたがたに降り注ぐだろう。」
### **祝福の約束**
主の言葉は甘い蜜のように民の心に染み渡った。モーセは両手を広げ、約束の地を指さした。
「見よ、あなたがたが足で踏む地は、乳と蜜の流れる場所である。主はあなたがたを高く上げ、周囲の国々はあなたがたを恐れる。雨は季節ごとに降り、畑は豊かな実りをもたらす。穀物とぶどう、オリーブの木は実に満ち、羊の群れは増え広がる。あなたがたの籠も、こね鉢も、主の恵みで溢れる。」
民の中から感嘆の声が上がった。若い母親は幼子を抱き、「この子は飢えることがない」と囁き、農夫は肥沃な畑を夢見て目を輝かせた。
「敵が攻めて来ても、主が彼らをあなたがたの前に敗走させる。彼らは一つの道から来ても、七つの道に逃げ散る。神があなたがたを聖なる民と宣言されるので、地のすべての国々はあなたがたを敬うだろう。」
### **警告の叫び**
しかし、モーセの表情は次第に厳しくなった。
「しかし、もしあなたがたが主の御声に聞き従わず、戒めを破るならば、呪いがあなたがたを襲う。それはあたかも、暗闇から忍び寄る獣のようだ。」
民の笑みが消え、代わりに不安が広がった。
「畑に種を蒔いても、敵がそれを奪い取る。空は青く晴れているのに、雨は降らず、地は鉄のように硬くなる。あなたがたの労苦は実らず、実ったとしても、いなごや害虫がすべてを食い尽くす。疫病が民の中に蔓延し、熱病と炎症で苦しむ。主はあなたがたを打ち、周囲の国々の嘲りの的とされる。」
ある老婆が震える声で叫んだ。「なぜ…なぜそんなことが起こるのか?」
モーセは深くうなずき、答えた。「それは、あなたがたが主を捨て、他の神々に従ったからだ。かつてエジプトで経験した恐怖を、再び味わうことになる。敵の包囲は激しく、ついには母親が自分の子供を食べるほどに飢えに苦しむ。」
### **悔い改めへの呼びかけ**
モーセの目には涙が浮かんでいた。
「しかし、覚えておきなさい。主は憐れみ深い方だ。もしあなたがたが心を尽くして主に立ち返るなら、神は再びあなたがたを集め、祝福を回復してくださる。主の懲らしめは、愛の証なのだ。」
民は深く考え込んだ。祝福と呪い、二つの道が彼らの前に広がっていた。
夕日が山々に沈み、影が長く伸びる中、モーセは最後にこう締めくくった。
「選びなさい。命と死、祝福と呪い、どちらを選ぶかはあなたがた次第だ。私は今日、天と地を証人として、あなたがたに命の道を教えた。主を愛し、御声に従いなさい。そうすれば、あなたがたとあなたがたの子孫は生き永らえるだろう。」
民は静かに祈り、決意を新たにした。約束の地への道は、神の言葉に従うか否かで決まる──彼らはその重みを、初めて真に理解したのだった。