聖書

「ヨシュア記5章:約束の地での聖なる準備」

# **ヨシュア記5章:約束の地での聖なる準備**

## **1. 敵の心に植えられた恐怖**

ヨルダン川を渡り、ついに約束の地カナンに入ったイスラエルの民。その知らせは、周囲の国々に瞬く間に広がった。エリコの王をはじめ、アモリ人の王たちや、海岸沿いに住むカナン人の首長たちは、この報せを聞いて、恐怖に震え上がった。

「主がイスラエルのためにヨルダン川の水をせき止め、彼らを乾いた地を通らせた」といううわさは、彼らの心を凍りつかせた。かつてエジプトで起こった十の災いや、紅海が二つに分かれた奇跡の記憶がよみがえり、もはや戦う意欲さえ失われた。彼らの顔から血の気が引き、もはやイスラエルに対して立ち向かう勇気は残っていなかった。

## **2. 主の命令:割礼の回復**

しかし、イスラエルの民にとって、戦いの前にすべきことがあった。主はヨシュアに告げられた。

**「ヨシュアよ、火打ち石の刃物を作り、イスラエルの民に再び割礼を行いなさい。」**

これは、エジプトを出た世代が荒野で死に、新たな世代が約束の地に入った今、彼らを神の民として聖別するための儀式であった。かつて、イスラエルの民はエジプトを脱出した後、荒野での不信仰ゆえに約束の地に入ることが許されなかった。しかし今、その子どもたちが主の契約を継承する時が来たのだ。

ヨシュアは直ちに火打ち石で刃物を作り、ギブアテ・ハアラロテ(「割礼の丘」の意)で民に割礼を施した。痛みを伴うこの儀式は、彼らがアブラハムとの契約に立ち返り、主の民として聖別されるためのしるしであった。

## **3. 恥の脱ぎ捨て:エジプトの嘲りの終わり**

主はヨシュアに言われた。

**「今日、わたしはエジプトの嘲りをあなたがたから取り除いた。」**

かつてエジプト人は、イスラエルの民が荒野でさまよう姿を嘲った。しかし今、彼らは約束の地に入り、神の契約を新たにした。もはや「主は彼らを導くことができず、荒野で滅びるだろう」という侮蔑は無意味となった。

民は傷の癒えるまでその地にとどまった。そして、主は彼らを癒し、次の戦いへと備えさせられた。

## **4. 過越の祭りの再開**

そのころ、ちょうど過越の祭りの時期が訪れていた。イスラエルの民は、エリコの平野でこの聖なる祭りを祝った。彼らが過越の祭りを行ったのは、エジプトを出て以来、実に40年ぶりのことである。

子羊が屠られ、その血が注がれる中、民はかつてエジプトで主が彼らを救い出された夜を思い起こした。そして今、約束の地で、再び主の救いを確信した。

## **5. 天からの糧の終わり、地の実りの始まり**

過越の祭りの翌日、民はついにカナンの地の産物を食べた。それは、彼らがマナに依存する生活の終わりを意味していた。

**「その日から、マナの降ることは止んだ。」**

40年間、主は彼らを荒野で養われた。しかし今、彼らは自らの労苦によって地の実りを得る時が来たのだ。

## **6. ヨシュアの前に現れた主の軍の将**

ある日、ヨシュアがエリコの近くを一人で見回っていると、目の前に一人の戦士が立っていた。その男は抜き身の剣を手にし、威厳に満ちていた。

ヨシュアは彼に近づき、問うた。
**「あなたは、味方なのか、それとも敵なのか?」**

すると、その戦士は答えた。
**「いや、わたしは主の軍の将として、今、来たのだ。」**

ヨシュアはすぐにひれ伏し、礼拝した。
**「わが主は、しもべに何をお命じになりますか?」**

すると、主の将は言った。
**「あなたの足のくつを脱ぎなさい。あなたの立っている場所は聖なる所である。」**

かつてモーセが燃える柴の前で聞いたのと同じ言葉。ヨシュアはその言葉に従い、くつを脱いだ。

## **7. 聖戦への備え**

この出来事は、エリコ攻略が単なる人間の戦いではなく、主ご自身が導かれる聖なる戦いであることを示していた。ヨシュアは民に命じ、主の指示を待つように伝えた。

イスラエルの民は、割礼によって聖別され、過越の祭りによって救いを覚え、そして主の軍の将の出現によって、神が共におられることを確信した。

こうして、彼らはエリコの戦いへと進んでいくのである。

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