聖書

預言者マラキと主の癒しの約束

**預言者マラキと主の約束**

ユダの荒れた山地に、冷たい風が吹き荒れる夕暮れ時。エルサレムの神殿は、かつての栄光を失い、人々の心は神から遠ざかっていた。祭司たちは形だけの捧げ物をし、民は不平をつぶやき、正義は地に落ちたように見えた。そのような時代に、預言者マラキは神の言葉を携えて立ち上がった。

「見よ。わたしはわたしの使者を遣わす。彼はわたしの前に道を整える」

マラキの声は、荒れ野に響く雷のように力強く、人々の胸に突き刺さった。彼は神殿の庭に立ち、群衆を見据えながら語った。

「主は突然、その宮に来られる。あなたがたが望んでいる方、契約の使者が。だが、だれがその日に耐えられよう? 彼は精錬する者の火のようであり、洗う者の灰汁のようである」

人々は顔を上げ、不安げに目を泳がせた。彼らの心には、神への半心半意な礼拝、隣人への裏切り、貧しい者たちへの無関心が重くのしかかっていた。

マラキは続けた。

「主は、レビの子らを裁くために近づき、ささげ物を不正にする者、偽りの誓いを立てる者を焼き尽くす。だが、主を畏れる者には、義の太陽が昇り、その翼には癒しがある」

ある日、一人の年老いた祭司がマラキに近づき、震える声で尋ねた。

「私たちはどうすればよいのか? 主の御心にかなう道を示してほしい」

マラキの目は慈愛に満ちた。

「十分の一をことごとく倉に携えよ。そうすれば、主は天の窓を開き、あふれるばかりの祝福を注がれる。また、互いに欺くことをやめ、孤児や寡婦を顧みよ。主はあなたがたの悔い改めを見逃さない」

その言葉を聞いたある貧しい寡婦は、涙を流しながら、わずかな穀物を神殿に捧げた。彼女の信仰は、灰の中から咲く一輪の花のようだった。

やがて、人々の間に変化が訪れた。不正を悔いた商人たちは、奪ったものを返し始め、祭司たちは真心を込めて礼拝をささげた。そして、主の約束は成就に向かっていた――

「わたしの名を畏れるあなたがたには、義の太陽が昇る。その翼には、癒しがある。あなたがたは飛び出して、肥えた子牛のように躍るだろう」

こうして、闇の中にあっても、主を待ち望む者たちの心に、希望の光が差し始めたのだった。

(マラキ書3章に基づく物語)

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