**コリント人への第二の手紙 第10章**
ある日、パウロはコリントの教会に宛てて、心を込めて筆を執った。彼の手紙は、単なる言葉の羅列ではなく、神の愛と権威に満ちた力強いメッセージであった。
「兄弟たちよ、私はキリストの柔和と慈愛をもってあなたがたに懇願します。」
パウロはそう書き始めた。彼は、自分が人々の前で謙遜に見えるかもしれないが、決して弱い人間ではないことを思い起こさせた。彼の戦いは血肉に対するものではなく、目に見えない霊的な戦いであった。
「私たちは血肉の戦いの武器を用いるのではなく、神の御前で強力な武器を持っています。それは、要塞を打ち破り、あらゆる高慢な思いを打ち砕き、キリストの知識に逆らうすべての理屈を捕虜とするものです。」
パウロの言葉は、まるで剣のように鋭く、真理の光を放っていた。彼は、自分たちが神に従っていることを強調し、コリントの信徒たちの中に潜む高慢や分裂の霊に対抗した。
「私たちは、自分の領域を越えて誇るようなことはしません。神が私たちに割り当ててくださった範囲内で働いているのです。」
彼は、コリントの教会が彼の宣教の働きによって建て上げられたことを思い出させた。彼は、他の人々の労苦の上に自分の功績を築くようなことはせず、ただ神が与えてくださった使命に忠実であった。
「『自らを誇る者は主を誇れ』と書かれている通りです。真に称賛に値するのは、主に認められた者であって、自分自身を推薦する者ではありません。」
パウロの言葉は深い神学的真理に根ざしていた。彼は、人間の評価ではなく、神の評価こそが重要であることを教えた。彼の権威は、手紙によって脅かすためではなく、教会を建て上げるために与えられていた。
こうして、パウロの手紙は、コリントの信徒たちの心に深く響いた。それは、単なる教えではなく、神の霊に満ちた生きた言葉であった。彼の戦いは、この世の力ではなく、神の無限の力によって導かれていたのである。