聖書

「エステル記1章 王妃ワシュティの決断と王の勅令」

**エステル記 第1章**

ペルシャ帝国の繁栄の頂点に君臨するクセルクセス王は、その広大な領土を治め、富と権力を手中に収めていた。彼の宮殿は首都シュシャンにそびえ立ち、その壮麗さは遠くまで響き渡っていた。宮殿の壁は金とラピスラズリで飾られ、庭園には世界中から集められた珍しい花々が咲き乱れ、噴水からは清らかな水が絶え間なく流れ出ていた。

王は即位してから三年目に、国中の高官、将軍、貴族たちを招いて盛大な宴を催した。この宴は百日にも及び、ペルシャ帝国の栄華を天下に示すためのものだった。宮殿の庭には白と紫の絹の幕が張り巡らされ、金と銀の寝台が整えられ、大理石の柱には真珠が散りばめられていた。杯はすべて金で作られ、それぞれが異なるデザインで飾られており、王の富の豊かさを象徴していた。

王は自ら賓客をもてなし、葡萄酒をふるまった。ペルシャの慣習では、王の命に従い、飲む量も自由であったが、誰もが王の喜びを損ねまいと気を配っていた。

一方、王妃ワシュティも宮殿の女性たちのために別の宴を開いていた。彼女は美しく気高く、王の寵愛を受けていたが、この日、王は葡萄酒に酔い、誇りに満ちた気持ちから、七人の侍従を通じてワシュティに命じた。

「王妃ワシュティに、王冠を戴き、民と高官たちの前に出て、その美しさを見せよ。」

この命令は、王妃としての威厳を保ちつつも、王の権威を示すためのものだった。しかし、ワシュティはこれを拒んだ。彼女は、王の酔った気まぐれに従うことを良しとせず、女性たちの前での立場を考えたのかもしれない。

王は激しく怒った。彼の命令が拒まれるなど、前代未聞のことだった。王はすぐに顧問たちを集め、この問題をどう扱うべきか問うた。

大臣メムカンが進み出て言った。

「王妃ワシュティが王に対してだけでなく、帝国全体の男性に対して無礼を働いたのです。このことが広まれば、妻たちが夫を軽んじ、反抗するようになるかもしれません。王は直ちに勅令を発し、ワシュティを王妃の位から退け、彼女にふさわしい処置を取るべきです。そして、新しい王妃を選ぶべきでしょう。こうして、帝国のすべての女性が夫を敬うことを学ぶのです。」

この提案は王と高官たちの心に響いた。王はメムカンの言葉に従い、ワシュティを王妃の位から退ける勅令を発布した。さらに、この決定が帝国全土に伝えられ、すべての家庭で夫が尊敬されるべきであると宣言された。

こうして、王妃の座は空位となり、ペルシャ帝国は新たな時代を迎えようとしていた。王の怒りは収まったが、この出来事が後のエステルの物語へとつながっていくのである。

(ここに、神の摂理が静かに働き、後の救いの計画が始まっていた。)

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