**詩篇77に基づく物語:夜の叫びと神の答え**
暗闇がエズラの家を包み込んでいた。部屋の隅では、わずかなランプの光がゆらめき、壁に長い影を落としていた。彼は床にひざまずき、顔を両手で覆っていた。心は重く、祈りの言葉さえも喉でつかえていた。
「神よ……どうして私を忘れられたのですか?」
エズラの声は震え、夜の静けさの中に消えていった。かつては喜びに満ちていた彼の信仰は、今や疑問と苦しみに押しつぶされそうだった。敵の攻撃、家族の病、そして続く旱魃——次々と襲いくる試練は、まるで神が彼を見捨てたかのように思わせた。
**「私は叫び、神に助けを求めた。私の声は夜もすがらとどろき、私の魂は慰めを拒んだ。」(詩篇77:1)**
彼は過去を思い返した。かつてエズラは、神の力強い御手が紅海を二つに分け、イスラエルの民を導かれたことを語り継いできた。しかし今、その同じ神がなぜ沈黙しているのか、理解できなかった。
「主の慈しみは永遠に消え去ったのか? 約束はもう果たされないのか?」
彼の心は混乱し、答えを見失っていた。しかし、ふと彼は幼い頃、祖父から聞いた言葉を思い出した。
**「私は昔の年、永遠の昔のわざを思い起こす。夜、私の心は探り、私の霊は問いかける。『主は永遠に捨てられるのか。再び恵みを表さないのか。』」(詩篇77:5-7)**
その瞬間、エズラは静かに目を閉じ、記憶をたどり始めた。神がどのようにして荒れ狂う海を静め、砂漠で民を養われたか。敵の手から奇跡的に救い出された民の物語。一つひとつの奇跡が、彼の心に蘇ってきた。
「……主の御業は聖なるものだ。」
彼の唇から自然と賛美が溢れた。暗闇の中でも、神の御手は確かに働いていた。試練は彼を打ち砕くためではなく、信仰を練り清めるためのものだった。
**「神よ、あなたの道は聖なるものです。どの神もあなたのように大いなる方はありません。あなたは奇跡を行われる神です。」(詩篇77:13-14)**
夜明けが近づき、部屋に薄明かりが差し込んできた。エズラの顔には、再び確信が宿っていた。彼は立ち上がり、窓の外に広がる朝焼けを見つめた。
「主は沈黙しておられるのではなく、ただ時を待っておられる。」
彼の心はもはや疑問で満たされてはいなかった。代わりに、神の約束への確信が静かに広がっていた。たとえ今は見えなくとも、神の道は完全であり、その御手は決して弱くはない。
こうして、エズラは新たな一日を迎えた。彼の祈りは変わった。もはや苦しみの叫びではなく、神の真実を宣言する賛美となっていた。
**「あなたは御力をもって、ご自分の民を、ヤコブとヨセフの子らを導かれました。」(詩篇77:15)**
神はかつて紅海を分け、民を導かれた。そして今も、同じ御手でエズラを支えていた。夜の闇は去り、新しい光が彼の道を照らし始めた。