聖書

「エレミヤの幻:良いいちじくと悪いいちじくの物語」

**エレミヤ書24章に基づく物語:良いいちじくと悪いいちじく**

ユダの王国がバビロンによって滅ぼされ、多くの人々が捕囚として連れ去られてから数年が経った。エルサレムの町は荒れ果て、かつて栄えたソロモンの神殿も廃墟と化していた。人々の心には絶望と混乱が広がり、神の約束に対する疑いが深まっていた。そのような中、預言者エレミヤは神からの幻を見た。

ある朝、エレミヤが静かに祈りをささげていると、突然、目の前に二つのいちじくの籠が現れた。一つは極めて良いいちじくで、熟れていて甘い香りを放ち、もう一つは腐って食べられないほど悪いいちじくだった。神の声がエレミヤに響いた。

**「エレミヤよ、あなたは何を見るか。」**
エレミヤは畏れつつ答えた。
**「主よ、いちじくです。良いものと悪いものです。」**

すると、主は彼に深い意味を語り始めた。
**「良いいちじくは、わたしがこの地からカルデア人の国(バビロン)へ捕らえ移したユダの捕囚の民を表す。わたしは彼らに目を注ぎ、良いことを思い、この地に帰らせる。彼らの心を建て直し、再びわたしの民とし、わたしを彼らの神とする。彼らは真心をもってわたしに立ち返り、わたしは彼らを完全に受け入れる。」**

エレミヤの心は熱くなった。捕囚の民は苦しみの中にあっても、神に従う者たちだった。彼らは異国の地で悔い改め、神に祈りをささげていた。神はその信仰を見逃さず、彼らを再び約束の地に導き、祝福を与えると約束されたのだ。

しかし、神の声は続いた。
**「しかし、腐った悪いいちじくは、ユダの王ゼデキヤとその高官たち、エルサレムに残った者、またエジプトの地に逃げた者を表す。彼らはこの地で滅び、すべての国々で辱められ、のろいとなり、恐怖となる。わたしは彼らを追い散らし、剣と飢饉と疫病によって滅ぼす。」**

エレミヤはその厳しい宣告に震えた。エルサレムに残った者たちは、自分たちが神の祝福を受けると傲慢に思い、悔い改めることを拒んでいた。彼らは偽りの預言者に惑わされ、バビロンに従うことを拒否し、結局、神の裁きを招いてしまったのだ。

神は最後にこう宣言された。
**「わたしの言葉を聞き分けよ。良いいちじくのように、わたしに従う者には希望と回復がある。しかし、悪いいちじくのように、わたしを拒む者は滅びる。」**

エレミヤはこの幻を人々に伝えた。捕囚の民には希望が与えられ、残った者たちには警告が発せられた。神の裁きは厳しいが、その中にも悔い改める者への憐れみが満ちていた。

この幻は、神の民にとって深い教訓となった。真の従順と悔い改めこそが神の祝福への道であり、傲慢と不従順は滅びに至るのだ。エレミヤは神の言葉を胸に刻み、残りの生涯をかけて人々に語り続けた。

こうして、神の正義と恵みは、二つのいちじくを通して永遠に示されたのである。

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