**ルツ記4章:神の御心による贖い**
ベツレヘムの町は、朝もやがゆるやかに晴れていく頃、人々の活気に包まれていた。町の門には、長老たちが腰を下ろし、日々の出来事や争いごとを裁いていた。その日、ボアズは意を決して町の門へと向かった。彼の心には、ナオミとルツのために、神の律法に従って「贖い」を行うという使命があった。
「ここに座しておられる方々、そして町の長老の方々、どうか私の言葉に耳を傾けてください」とボアズは声を張り上げた。人々の視線が集まる中、彼は続けた。「ナオミがモアブの野から帰って来た時、彼女は夫エリメレクの所有していた畑を手放さなければなりませんでした。この土地を買い戻し、一族のものとして守るべき『贖い主』が、この中におられるはずです。もしあなたがその務めを果たすのであれば、どうぞここで宣言してください。しかし、もしあなたがそれを望まないのであれば、私がその役目を引き受けます。」
人々のざわめきが広がった。長老たちは互いに顔を見合わせ、神の律法に従って正しい判断を下そうとした。すると、ボアズが指し示したもう一人の近親者が前に進み出た。「私がその土地を贖いましょう」と彼は言った。
ボアズは静かに頷き、さらに言葉を加えた。「しかし、覚えておいてください。あなたがその土地を買い戻す時、モアブの女ルツ、かつてエリメレクの息子の妻であった者をめとり、死んだ者の名をその嗣業の上に立てる義務も生じます。」
それを聞くと、その男の表情が曇った。彼は一族の財産を分けることを望まず、自分の嗣業が損なわれることを恐れたのだ。「では、私にはその務めを果たすことはできない」と彼は言い、片方のサンダルを脱いでボアズに渡した。これは、イスラエルの慣習において、取引が成立したことを示すしるしであった。
ボアズは長老たちとすべての民に向かって宣言した。「あなたがたは、今日、私がエリメレクとその息子たちの所有していたすべてのものをナオミの手から買い取ったことを証人となってください。また、モアブの女ルツを妻に迎え、死んだ者の名をその嗣業の上に立て、彼の名が兄弟の間や、この町の門から絶えることのないようにします。」
長老たちと民は皆、「わたしたちは証人です。どうか主が、あなたの家に入るこの女を、イスラエルの家を建てたラケルとレアのようにされますように。どうかあなたがエフラタで誉れを得、ベツレヘムで名をあげられますように。また、主がこの若い女によって与えてくださる子孫によって、あなたの家が、タマルがユダに産んだペレヅの家のようになりますように」と祝福した。
こうしてボアズはルツを妻に迎え、主は彼女にみごもる恵みをお与えになった。やがて、彼女は男の子を産んだ。女たちはナオミに言った。「主をほめたたえます。主は今日、あなたを捨てておかれず、あなたのための『贖い主』をお与えになりました。どうかこの子の名がイスラエルに知れ渡りますように。」
ナオミはその子を抱き、養い育てた。近所の女たちは、「ナオミに男の子が生まれた」と言って、その子をオベデと名付けた。オベデは、やがてエッサイの父となり、エッサイはダビデの父となった。
こうして、神はルツの忠実な愛とボアズの信仰深い行動を通して、ご自身の御計画を進められた。ベツレヘムの小さな物語は、やがて来るべきダビデの王権、そしてメシアの約束へとつながっていくのであった。
**終わり**