**歴代誌第一 26章に基づく物語:門を守る者たちの使命**
エルサレムの神殿は、神の栄光が宿る聖なる場所であった。その神殿の周りには、高く堅固な城壁が巡らされ、幾つかの門が設けられていた。これらの門は、単なる出入り口ではなく、神の家を汚れから守るための神聖な境目であり、そこには忠実で勇敢な者たちが選ばれて立ち番をしていた。
### **門衛の長、メシェレムヤとその一族**
その時代、神殿の門を守る者たちの長として、メシェレムヤという人物がいた。彼はコラ族の出身で、オベデ・エドムの子であった。オベデ・エドムはかつて、ダビデ王の時代に神の契約の箱を預かったことで知られる敬虔な人物であり、その家は神の祝福に満ちていた。メシェレムヤは、父の信仰を受け継ぎ、心から主に仕える者として成長した。
メシェレムヤには七人の息子が与えられ、それぞれが力強く信仰に篤い戦士であった。長男はザカリヤ、次男はエデヤ、三男はヤティエル、四男はエラム、五男はヨハナン、六男はエリホエナイ、七男はエルアテであった。彼らは幼い頃から神殿の務めを教えられ、神への畏れを胸に刻まれていた。
ある日、ダビデ王は神殿の門衛を任命するため、メシェレムヤとその息子たちを呼び寄せた。王は彼らを見つめ、力強い声で言った。
「主は、あなたがたの父オベデ・エドムの家を祝福された。今、あなたがたも神殿の門を守る務めを託そう。この務めは軽くはない。神の家を汚れから守り、聖なる場所を侵す者を許してはならない。」
メシェレムヤは深く頭を下げ、息子たちと共に誓った。
「王よ、私たちは主の御前に忠実であり、この務めを全うします。」
### **東の門を守る者たち**
神殿の東の門は、最も重要な門の一つであった。ここは朝日が最初に差し込む場所であり、祭司たちが毎朝、犠牲を捧げるために通る道でもあった。メシェレムヤの長男、ザカリヤはこの東の門の責任者に選ばれた。彼は聡明で、常に冷静な判断を下すことができた。
ある夜、ザカリヤが東の門の見張りをしていると、遠くから不審な人影が近づいてくるのが見えた。彼はすぐに仲間の門衛たちに合図を送り、警戒態勢を整えた。
「誰だ!」とザカリヤが声をかけると、その人影は震える声で答えた。
「私は近くの村の者です。しかし、敵の襲撃に遭い、逃げてきたのです。どうか、神殿に避難させてください。」
ザカリヤはその男の目をじっと見つめた。彼の言葉には嘘が混じっているように感じた。
「神殿は神の家だ。偽りの心を持って入る者は許されない。」
ザカリヤは慎重に調べ、その男が実は敵の間者であることを見抜いた。男は捕らえられ、神殿の聖さは守られたのである。
### **北の門と南の門の忠実な守り手**
一方、北の門はメシェレムヤの次男、エデヤが任された。北は敵の侵入を受けやすい方角であり、常に緊張を強いられる場所であった。エデヤは力強く、剣の腕も優れていたが、何よりも信仰に堅く立つ者であった。
ある寒い夜、エデヤは仲間の門衛たちと共に、暖を取るために小さな火を囲んでいた。すると、遠くから奇妙な音が聞こえてきた。
「何かの物音だ…」
エデヤはすぐに剣を手に取り、仲間たちを集めた。音のする方へ進むと、暗闇の中に武装した者たちの姿が見えた。彼らは神殿に侵入しようとしていたのである。
「止まれ! ここは主の神殿だ。お前たちのような者を通すわけにはいかない!」
エデヤの力強い叫びに、敵は驚き、逃げ出した。彼の勇気と信仰が、神殿を危機から救ったのである。
南の門は三男のヤティエルが守っていた。南の門は巡礼者や礼拝に来る者たちが多く通る場所であり、ヤティエルは人々を温かく迎えながらも、常に警戒を怠らなかった。
ある日、貧しい女が幼い子を連れて神殿に入ろうとした。しかし、彼女は汚れた衣を着ており、門衛の一人が入ることを拒もうとした。
ヤティエルはその女の悲しみに満ちた目を見て、近寄り、優しく尋ねた。
「どうしたのですか?」
女は涙を流しながら答えた。
「私は夫を亡くし、この子と共に生きる糧もありません。主の憐れみを求めて、神殿に来たのです。」
ヤティエルは彼女の純粋な信仰を見て、衣を清めるための水を与え、神殿に入ることを許した。
「主は心の砕かれた者を顧みてくださる。安心して祈りなさい。」
### **西の門と宝物庫の番人**
西の門は四男のエラムが担当した。この門は宝物庫に通じており、神殿の財産を守る重要な役割があった。エラムは細やかな心遣いのできる者で、神殿の宝物が一つも失われることなく管理された。
また、メシェレムヤの他の息子たちも、それぞれの場所で忠実に務めを果たした。五男のヨハナンは祭司たちの出入りを監視し、六男のエリホエナイは夜間の見張りを担当した。七男のエルアテは、神殿の周囲を巡回し、不審者がいないか常に目を光らせていた。
### **神に選ばれた者たちの使命**
こうして、メシェレムヤとその息子たちは、神殿の門を堅く守り、神の家を汚れから守り通した。彼らの働きは単なる任務ではなく、神への深い信仰と忠誠の表れであった。
主は彼らを祝福し、その家族もまた、代々にわたって神殿の務めを継承していった。彼らのように、神に選ばれた者は、たとえ目立たない場所であっても、その使命を全うすることが何よりも大切なのである。
「門を守る者よ、夜はどれほど長いか。」(詩篇130:6)とあるように、神の家を守る務めは、決してたやすいものではない。しかし、主に信頼する者には、必ず力と知恵が与えられる。メシェレムヤとその一族の物語は、そのことを私たちに教えてくれるのである。