聖書

「背信の民と神の憐れみ:エレミヤ書3章の物語」

**エレミヤ書3章に基づく物語:背信の民と神の憐れみ**

ユダの荒野に吹く風は、乾いた砂を巻き上げ、荒れ果てた土地をさらっていた。預言者エレミヤは、その風に乗って聞こえてくる神の声に耳を傾けていた。彼の心は重く、神から託された言葉は、民の背信を告げる厳しいものだった。

「もし、夫が妻を離縁し、彼女が彼のもとを去って他の男のものとなったとき、夫は再び彼女のもとに帰ることができようか。そのようなことをすれば、この地は完全に汚されるではないか。」

エレミヤは神の言葉をかみしめた。イスラエルの民は、まるで不貞な妻のように、唯一の夫である神を捨て、異国の神々に心を寄せていた。彼らは豊かな実りをもたらすと約束するバアルにひれ伏し、高き所で香をたき、偶像の前で淫らな祭りを行っていた。

神の声はさらに続いた。

「おまえは多くの恋人と姦淫を重ねたが、わたしのもとに帰れ、と主は言われる。ただ、おまえの不義がおまえの道をふさいでいる。おまえは恥を知らず、悪を行いながらも、『わたしは罪を犯していない』と言い張る。」

エレミヤは目を閉じ、かつて栄えた北の王国イスラエルを思い浮かべた。彼らもまた、神を捨てたためにアッシリアの手に渡され、滅ぼされた。しかし、南の王国ユダはその教訓を学ばず、同じ過ちを繰り返していた。

「背信のイスラエルは、姦淫の罪を犯したユダよりも正しい。彼女は少なくとも離縁状を受け取り、その罪を認めた。しかし、ユダは偽りの心でわたしに立ち返ろうとする。」

神の怒りは激しかったが、その中にも深い悲しみがにじんでいた。エレミヤは神の心を感じ、胸が締めつけられる思いだった。

「イスラエルの子らよ、帰れ。背信の罪を捨てよ。わたしは怒りの顔をあなたがたに向けない。わたしは慈しみ深いからだ。とこしえの怒りは抱かない。」

神は、民が悔い改めることを望んでおられた。エレミヤはその招きを民に伝えようと決意した。彼はエルサレムの街角に立ち、叫んだ。

「主はこう言われる。『わたしはあなたがたを愛している。ひとり残らず、わたしのもとに帰れ。わたしはあなたがたを、忠実な牧者のもとに連れ戻し、心の奥底から従う者とする。』」

しかし、人々の目は冷たく、耳は閉ざされていた。祭司たちは嘲笑い、王の側近たちはエレミヤを無視した。それでもエレミヤは叫び続けた。

「主は新しい契約をあなたがたと結ぼうとしておられる。かつてシナイ山で石の板に記された律法ではなく、心に刻まれる律法を。あなたがたはもう二度とわたしを捨てないだろう。」

風が再び荒野を駆け抜け、エレミヤの衣をはためかせた。彼の目には涙が浮かんでいた。神の憐れみは無限であり、たとえ民が背いても、悔い改める者を受け入れる備えがあった。

「帰れ、背信の子らよ。わたしはあなたがたを癒やす。」

神の声は優しく、しかし力強く響いた。エレミヤは祈った。

「主よ、どうかこの民の心を開いてください。彼らがあなたの愛に気づき、真実に立ち返ることができますように。」

そして、荒野の彼方から、遠く希望の光が見えた。神の約束は決して空しくはならない。いつか、民は目を覚まし、真の夫である神のもとに帰る日が来る――。

エレミヤはその日を信じ、歩みを続けた。

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