**詩篇123篇に基づく物語**
**題:主を仰ぎ見る民の祈り**
エルサレムの丘に夕日が沈み、金色の光が神殿の壁を優しく照らしていた。人々の一日の労働が終わりを告げる頃、街の喧騒も少しずつ静まっていった。しかし、ある小さな家の屋上では、一人の男が膝をつき、天を仰いでいた。その名はエリアム。彼はユダの民の一人で、長年にわたり異国の圧政に苦しめられていた。
エリアムの目には涙が浮かんでいた。彼の家族は貧しく、毎日のように隣国の者たちに嘲られ、苦しめられていた。しかし、彼の心には一筋の希望があった。それは幼い頃から父が教えてくれた詩篇の言葉だった。
**「天にいますわたしの目よ。わたしはあなたを仰ぎ見ます。」**
彼は静かに唇を動かし、祈りをささげた。
「主よ、あなたの御前に僕は立ちます。どうか、この苦しみから救い出してください。異国の者たちは私たちを見下し、嘲ります。しかし、私たちはあなたに信頼します。ちょうどしもべが主人の手を、はしためが女主人の手を見つめるように、私たちもあなたの憐れみを待ち望みます。」
エリアムの祈りは、夜風に乗って天へと昇っていくかのようだった。彼の心には、かつてイスラエルの民がエジプトの奴隷であった時、主がどれほど力強い御手をもって彼らを救い出したかという記憶がよみがえった。主は決してご自分の民を見捨てられない。
次の日、エリアムは仲間たちと共に集まり、祈りをささげた。彼らは皆、同じ苦しみを背負っていた。異国の支配者たちは彼らを軽蔑し、不当な税を課し、時には暴力さえ振るった。しかし、彼らは主を仰ぎ見ることをやめなかった。
「主よ、私たちをあわれんでください。私たちは嘲られ、苦しめられています。しかし、あなたこそが私たちの望みです。」
祈りが終わると、エリアムはふと、遠くの丘の上に一人の預言者の姿を見た。その預言者は静かに彼らを見つめ、こう語った。
**「主はあなたがたの祈りを聞かれた。忍耐せよ。主の時は近い。」**
その言葉を聞いたエリアムの心に、深い平安が訪れた。彼は再び天を見上げ、主への信頼を新たにした。
それから幾日か経ったある夜、エルサレムに不思議なうわさが広まった。異国の王が急病に倒れ、軍勢が撤退を始めたという。人々は驚き、喜び、神殿に駆けつけて主を賛美した。
エリアムは仲間たちと共に、感謝の祈りをささげた。
「主は真実なお方です。私たちがどれほど辱められても、主は私たちを見捨てられませんでした。ちょうど主人がしもべを顧みるように、主は私たちに目を留めてくださったのです。」
そして、詩篇の言葉が彼の心に再び響いた。
**「主よ、私たちをあわれんでください。私たちは嘲りに飽き、驕りに満ちた者の侮りに耐えてきました。」**
エリアムは、これからもどんな苦難の中でも主を仰ぎ見ることを誓った。主こそが唯一の救いであり、望みであることを、彼は深く心に刻んだのである。
**(終わり)**
この物語は、詩篇123篇の主題である「主への信頼と待望」を描いています。苦しみの中でも天を仰ぎ、主の憐れみを待ち望む信仰が、エリアムとその仲間たちを通して表現されています。神は決してご自分の民を見捨てず、真実をもって応えてくださる方です。