**詩篇27章に基づく物語:主はわが光、わが救い**
荒野の風がうなり、砂塵が舞い上がる中、ダビデは岩陰に身を隠していた。彼の心は敵の脅威に脅かされていたが、魂の奥深くには揺るがない確信があった。
「主はわたしの光、わたしの救い。わたしはだれを恐れよう。主はわたしの命のとりで。わたしはだれをおじ恐れよう。」
彼は静かに口ずさんだ。その言葉は、彼の父エッサイの家で羊を飼っていた少年の日々を思い起こさせた。あの頃、獅子や熊から群れを守った時も、主が共におられた。今も変わらない。敵が彼を包囲し、戦いのうわさが飛び交っても、彼の信仰は岩のように堅かった。
### **敵の包囲**
ダビデが身を寄せていた洞窟の外では、サウル王の兵士たちが彼を探し回っていた。槍と盾の音が響き、怒声が飛び交う。彼らはダビデを「王位を狙う反逆者」と呼び、捕らえるために必死だった。しかし、ダビデの心は乱れなかった。
「たとえ、はらわたを食らう者がわたしに向かって陣を敷いても、わたしの心は恐れない。たとえ、戦いがわたしに向かって起こっても、なお、わたしはみこころのままに信頼する。」
彼は目を閉じ、主の御顔を慕い求めた。かつて、ゴリアテとの戦いの前夜、彼は同じように祈り、主の力を感じた。今も、敵の数が多くとも、主が共におられるなら、勝利は約束されていた。
### **主の家を慕い求めて**
夜が更け、星が荒れ野に輝く中、ダビデは深い祈りに沈んだ。
「一つのことを主に願った。わたしはそれを求める。わたしのいのちの日の限り、主の家に住まい、主のうるわしきを見、その宮で、思いにふけることを。」
彼の心はエルサレムへと飛んだ。まだ主の神殿は建てられていないが、契約の箱が安置されている場所──そこには神の栄光が満ちていた。ダビデは、いつか主のために立派な宮を建てたいと願っていた。しかし、今はこの荒野で、主の臨在を求めるしかなかった。
「主は、悩みの日にわたしをその幕屋にひそませ、その仮屋の隠れ場におおい、岩の上にわたしを高くあげられる。」
彼は確信した。たとえ今は逃げ回る身であっても、主は必ず彼を高く引き上げ、王として立ててくださる。
### **信仰の勝利**
夜明けが近づき、敵の足音が遠のいていった。ダビデは静かに洞窟を出て、東の空に昇り始める朝日を見つめた。
「わたしの敵どもを見てください。彼らはつまずき倒れた。わたしに逆らって戦う軍勢は、滅びうせた。」
彼の唇に笑みが浮かんだ。主は彼の祈りに答えてくださった。敵は撤退し、彼は再び自由を得た。
「わたしの父、わたしの母がわたしを捨てるとも、主はわたしを迎えられる。」
かつて、兄たちから軽んじられ、サウル王から追われる身となったが、主は決して彼を見捨てなかった。
### **待ち望む心**
ダビデは荒野の道を歩き始めた。まだ完全な勝利は見えていないが、彼の心は確信に満ちていた。
「主を待ち望め。強く、かつ雄々しくあれ。主を待ち望め。」
彼は自分自身に言い聞かせた。主の時は最善の時。急ぐ必要はない。主が備えてくださる道を、静かに歩めばよい。
こうして、ダビデは詩篇27篇の信仰を胸に、次の戦いへと進んでいった。主が共におられる限り、彼には何も恐れるものはなかった。
**(終わり)**