**エレミヤ書16章に基づく物語**
ユダの地は、かつてないほどの暗黒に包まれていた。預言者エレミヤは、主の言葉を携え、荒廃したエルサレムの路地を歩いていた。彼の心は重く、神から与えられた使命の厳しさに胸が締め付けられるようだった。
主はエレミヤにこう命じられた。
「あなたはこの地で妻をめとってはならない。また、息子や娘をもうけてはならない。」
この命令は、エレミヤの人生を孤独なものとした。人々は彼を訝しげに見た。「なぜ預言者は結婚しないのか? なぜ子孫を残さないのか?」と。しかし、エレミヤは神の意志を知っていた。ユダの民は、まもなく大きな災いを見ることになる。彼らの不従順と偶像礼拝の結果、バビロンによる破滅が訪れるのだ。子を産み、育てる喜びは、この地ではもはや無意味となる。
ある日、エレミヤは町の広場で人々に語りかけた。
「主はこう言われる。『この場所で、もはや喜びの声も、花婿と花嫁の声も聞かれない。死の静寂がすべてを覆う。』」
人々は嘲笑った。「お前はいつも災いばかり預言する。神は我々を見捨てないはずだ。我々はアブラハムの子孫だ!」
しかし、エレミヤは彼らを見据え、さらに厳しい言葉を続けた。
「主は言われる。『あなたがたの先祖も、わたしを捨てて他の神々に従った。彼らは罪を重ね、わたしの教えを無視した。今、あなたがたは先祖よりもさらに悪を行い、心をかたくなにしている。』」
人々の顔から笑みが消えた。エレミヤの言葉は、彼らの胸に突き刺さる刃のようだった。
やがて、主はエレミヤにさらなる幻を示した。
「見よ、漁師たちがやって来て、あなたがたを釣り上げる。また、狩人たちが山々に罠を仕掛け、あなたがたを捕らえる。あなたがたの罪は隠れていても、わたしの目からは逃れられない。」
エレミヤは震える声で人々に警告したが、彼らは耳を塞いだ。
しかし、神の裁きは確かに近づいていた。遠くから、バビロンの軍勢の足音が聞こえるようだった。
それでも、主は最後の希望を残していた。
「しかし、わたしはあなたがたを諸国の民の中から連れ戻し、再びこの地に帰らせる。あなたがたが『主は生きておられる』と告白する日が来る。」
エレミヤは孤独の中で、この約束を胸に刻んだ。彼の使命は苦しいものだったが、神の真実は決して揺るがない。やがて、悔い改めた民が再び主に立ち返る日が来る——その希望を抱きながら、エレミヤは歩み続けた。
(終わり)