**イザヤ書50章に基づく物語:主に従う僕の苦難と栄光**
荒野の風がうなりを上げ、砂塵が舞い上がる中、預言者イザヤは深い黙想にふけっていた。彼の心には、神から与えられた幻が鮮明に浮かんでいた。それは、苦しみながらも主に従い通す「僕」の姿であった。
「見よ、主はこう言われる」とイザヤはつぶやいた。「わたしがあなたがたを遣わしたのに、なぜあなたがたは帰って来たのか? わたしがあなたがたを贖ったのに、なぜあなたがたは売り渡されたのか?」
彼の眼前には、イスラエルの民の姿が映し出されていた。彼らは神の律法を忘れ、自分たちの欲望に従って歩んでいた。神殿では形だけの礼拝が行われ、人々の心は神から遠ざかっていた。しかし、その中でも主は真実を貫く者を備えていた。
### **主の僕の従順**
幻の中で、イザヤは一人の人物を見た。その者は、神の声に耳を傾け、どんな苦難にもひるまない。「主なる神は、わたしに弟子の舌を与え、疲れた者を励ます言葉を知るようにされた。朝ごとに、わたしの耳を呼び覚まし、弟子のように聞き従うようにされる」
この僕は、神の教えを一心に受け止め、辱めや苦しみに耐えていた。彼の顔は打たれ、髪の毛は引き抜かれ、嘲りの言葉を浴びせられた。しかし、彼は決して背を向けなかった。「わたしは背を打つ者に背をまかせ、頬を打つ者に頬をまかせた。侮辱され、唾をかけられても、わたしは顔を隠さなかった」
### **神の正義と救いの約束**
イザヤは、この僕の苦しみが無駄ではないことを悟った。神は彼を義と認め、やがて敵を裁かれる。「見よ、主なる神がわたしを助ける。だれがわたしを罪に定めることができよう。見よ、彼らはすべて衣のように朽ち、蛾に食われる」
しかし、民の中には、暗闇を選ぶ者もいた。彼らは自分の力に頼り、神の火の光を拒んだ。「あなたがたのうち、主を恐れ、その僕の声に聞き従う者はだれか。暗闇の中を歩む者は、自分が信じる光のないままに倒れるだろう」
### **信仰による勝利**
イザヤの幻は、希望で締めくくられた。苦難に耐えた僕は、神の栄光を受ける。「主を信じる者は、たとえ今は苦しみの中にあっても、必やがて救いを見る。主はご自身に従う者を決して見捨てられない」
預言者は深い感動に包まれ、神の言葉を民に伝える決意を新たにした。彼は巻物にこの啓示を記し、後の世代に残そうとした。
「主を畏れよ。たとえ今は闇が覆っていても、神の光は消えることがない。主に従う者は、永遠の義の衣をまとうのだ」
こうしてイザヤは、神の僕の苦難と栄光の物語を語り継いだ。それは、やがて来るメシアの姿を指し示す、神の約束の言葉であった。