聖書

出エジプト記18章:エトロの知恵と導き

**出エジプト記18章:エトロの訪問と知恵の共有**

荒野の太陽が砂漠の地平線に沈み、燃えるような夕焼けがシナイの山々を赤く染めていた。モーセは天幕の前で座り、疲れた体を休めながら、今日も一日、民の間で起こった争いを裁き終えたばかりだった。額には深い皺が刻まれ、手には羊皮紙の巻物が握られていた。彼の心は重かった。イスラエルの民は膨大で、一人で全てを裁くことはもはや限界に達していた。

その時、遠くから砂煙が上がり、らくだの隊列が近づいてくるのが見えた。先頭には白髪の長老が乗っており、その顔には長い旅の疲れと共に、深い知恵が宿っていた。モーセは目を凝らし、すぐにその人物が誰であるか気づいた。

「エトロ……!」

彼の義父であり、ミデヤンの祭司であるエトロが、モーセの妻ツィポラと二人の息子、ゲルショムとエリエゼルを連れてやって来たのだ。モーセは急いで立ち上がり、義父を迎えに行った。二人は抱き合い、長い別れを喜び合った。

「主があなたを守ってくださったことを感謝する」とエトロは深く頷き、モーセの肩を強く握った。

モーセは天幕の中にエトロを招き入れ、主がイスラエルのために行われたすべての奇跡——エジプトからの脱出、紅海の分裂、荒野でのマナと水の供給——を語り聞かせた。エトロは目を輝かせながら聞き、やがて顔を上げて言った。

「主はほむべきかな! エジプト人とファラオの驕りからあなたがたを救い出された。今、私は知った。主はすべての神々にまさって偉大な方だ」

翌日、モーセは再び民の争いを裁くために座についた。人々は朝から晩まで列をなし、モーセの前に立ち続けた。エトロはその光景をじっと見つめ、夕方になるとモーセに言った。

「あなたはなぜ、一人でこれをすべて行っているのか? このやり方では、あなたも民も疲れ果ててしまう」

モーセはため息をつきながら答えた。

「民が神の御心を知り、律法に従って歩むために、私は彼らの間に立って裁かなければならないのです」

エトロはゆっくりと首を振った。

「良いことだが、持続できる方法ではない。聞きなさい。神があなたと共におられるなら、私の言葉に耳を傾けてほしい」

そして、エトロは知恵に満ちた助言を授けた。

「あなたは民の前に立って神の御旨を教え、彼らが歩むべき道を示すべきだ。しかし、実際の争いの裁きは、能力ある者たち——神を畏れ、誠実で、不正な利得を憎む者たち——を選び、千人隊長、百人隊長、五十人隊長、十人隊長として立てなさい。小さな問題は彼らに任せ、大きな問題だけをあなたが取り扱うようにすれば、負担は軽くなる。民も平和のうちに自分の場所に帰ることができるだろう」

モーセはこの言葉に深く感銘を受け、すぐにエトロの助言に従うことにした。彼はイスラエルの中から有能な者たちを選び、彼らを指導者として任命した。それぞれが自分のグループを治め、正しい裁きを行った。

こうして、モーセの重荷は軽くなり、民の間にも秩序が生まれた。エトロは数日間、イスラエルの宿営に滞在した後、再び自分の土地へと帰っていった。彼の知恵は、神の民をより強く、より賢くした。

モーセは天幕の前で祈りながら、主の導きと、義父エトロを通して与えられた知恵に感謝した。荒野の夜風がそよぎ、星々がきらめく中、イスラエルの新しい秩序が静かに始まろうとしていた。

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