**知恵の道を歩む者**
昔、イスラエルの地にエルカナという名の賢者が住んでいた。彼は主を深く畏れ、日々、神の知恵を求めて祈りをささげていた。エルカナには三人の息子がいたが、それぞれ性格が異なり、父の教えをどう受け止めるかで彼らの人生は大きく分かれることになった。
ある日、エルカナは息子たちを集め、こう語り始めた。
「『人は心にたくさんの計画を思い巡らす。しかし、主の御旨が実現する』(箴言16:1)。お前たちも自分の道を選ぶ時が来た。しかし、知恵とは自分の力に頼るのではなく、神にすべてを委ねることにこそあるのだ。」
長男のヨナタンは力強く、自信に満ちていた。彼は父の言葉を聞きながらも、心の内ではこう思った。
「私は強い。自分の力でこの地を治め、富を築いてみせる。神の助けなど必要ない。」
彼はすぐに旅立ち、商人として成功を収めようとした。しかし、高慢な心は彼を欺き、取引で失敗を重ね、ついにすべてを失ってしまった。その時、彼は初めて父の言葉を思い出した。
「『高慢は破滅に先立ち、傲慢な霊は転倒に先立つ』(箴言16:18)。私は自分の力を過信し、神を忘れていた。」
悔い改めたヨナタンは父のもとに帰り、謙虚に助言を求めた。
一方、次男のミカエルは慎重で、いつも人の意見を気にしていた。彼は父の教えを聞き、「『人の道を主は堅くされる。その行くべき道を喜ばれる』(箴言16:9)という言葉に安心した。しかし、彼は極端に人を恐れ、自分の判断ができなくなってしまった。
「もし間違えたらどうしよう…」
彼は決断を避け、何も行動を起こせずに年月を過ごした。父は彼に言った。
「主はお前の歩みを支えてくださる。しかし、立ち止まったままでは、神の導きを見逃してしまう。」
ミカエルは勇気を出し、少しずつ信仰に基づいた選択をし始めた。
三男のダニエルは幼い頃から神の言葉を愛し、父の教えを心に刻んでいた。彼は「『柔和な答えは憤りを静める。しかし、傷つける言葉は怒りを引き起こす』(箴言16:24)という言葉を実践し、争いを避け、人々と平和に生きようとした。
ある日、村人同士の争いが起こった時、ダニエルは両者の間に入り、穏やかに話を聞いた。彼の態度に心を打たれた人々は和解し、村は再び平和を取り戻した。父エルカナは喜び、こう言った。
「『人は計画を心に描くも、舌の応答は主による』(箴言16:1)。お前は神の知恵に従い、正しい言葉を選んだ。」
年月が流れ、エルカナは年老いた。彼は三人の息子たちに最後の教えを残した。
「『白髪は栄光の冠。正しい生き方によって得られる』(箴言16:31)。お前たちが歩んだ道はそれぞれ違った。しかし、神を畏れ、その導きに従う者には、真の知恵が与えられる。それを忘れるな。」
三人の息子たちは父の言葉を胸に刻み、それぞれの道で主に従い続けた。そして、彼らの子孫にも、この知恵は語り継がれていったのである。
**(終わり)**
この物語は、箴言16章の教えを基に、高慢の危険性、神への信頼、柔和な言葉の力、そして神の導きの重要性を描いています。それぞれの登場人物の選択が、聖書の知恵とどのように関わるかを示しています。