**エレミヤの鉄のくびき**
ユダの王、ゼデキヤの治世の初めのことである。主は預言者エレミヤに告げられた。
「エレミヤよ、鉄のくびきを作り、それを首にかけ、エルサレムに遣わされた使者たちに示せ。彼らはエドム、モアブ、アンモン、ティルス、シドンの王たちのもとから来ている。彼らに主の言葉を伝えるのだ。」
エレミヤは主の命じられた通り、鉄のくびきを鍛え、それを自分の首にかけた。その重さは、彼の肩に深く食い込み、一歩一歩が苦痛を伴った。しかし、これはただの象徴ではなかった。主がすべての国々に下そうとしておられる裁きのしるしであった。
エルサレムの宮廷には、諸国の使者たちが集まっていた。彼らはバビロンの王ネブカドネザルに対する反逆を企て、共に戦うための同盟を結ぼうとしていた。エレミヤはその重いくびきを付けたまま、彼らの前に立ち、主の言葉を宣言した。
「イスラエルの神、主はこう言われる。『あなたがたは、この鉄のくびきのように、バビロンの王ネブカドネザルのくびきを負わなければならない。主は彼に、この地とすべての国々を支配する権威を与えられた。もし、あなたがたが彼に仕え、彼のくびきを受け入れるならば、生き延びることができる。しかし、もしあなたがたが預言者や占い師の言葉に耳を傾け、『バビロンに仕える必要はない』と言うならば、剣と飢饉と疫病によって滅びる。』」
使者たちはエレミヤの言葉を聞き、驚きと怒りに満ちた表情を浮かべた。彼らの中には、エレミヤを嘲る者もいた。
「我々は自由な民だ。なぜ我々がバビロンの奴隷とならなければならないのか?」
しかし、エレミヤは主の言葉を曲げず、さらに語った。
「主は言われる。『偽りの預言者たちが、『バビロンは倒れる』と語っても、それを信じてはならない。彼らはあなたがたを欺いている。もし彼らの言葉に従うならば、あなたがたはこの地から追い出され、異国の地で滅びる。しかし、くびきを受け入れ、バビロンに従うならば、あなたがたはこの地にとどまり、生き延びることができる。』」
王ゼデキヤもまた、この言葉を聞いた。彼の心は揺れ動いていた。一方では、バビロンに従うことが国の存続につながると考える賢い家臣たちの意見があり、もう一方では、「神は我々を見捨てない。必ずバビロンを打ち破る」と叫ぶ偽預言者たちの声があった。
エレミヤは王の前に進み出て、懇願するように言った。
「王よ、どうか主の御声に従ってください。このくびきは重いですが、もしあなたが主の御心に従うなら、やがて解かれる時が来ます。しかし、反抗すれば、さらに重い裁きが下されるでしょう。」
しかし、ゼデキヤの心は定まらなかった。彼はエレミヤの言葉を聞きながらも、偽預言者ハナンヤの「主はバビロンのくびきを打ち砕かれる」という甘い約束に耳を傾けてしまった。
やがて時は過ぎ、主の言葉の通り、バビロンは諸国を打ち破り、エルサレムも滅びの時を迎えるのであった。
**結び**
エレミヤの鉄のくびきは、単なる象徴以上のものであった。それは神の主権と、人間の反抗に対する警告であった。主の言葉に従う者には命の道が開かれるが、偽りの希望にすがる者は滅びに至る。この物語は、神の御心に聴き従うことの重要性を、今日の私たちにも強く訴えかけるのである。