**エゼキエル書2章に基づく物語**
預言者エゼキエルは、ケバル川の畔で幻を見ていた。その日、空は深い青に覆われ、風が穏やかに葦を揺らしていた。突然、天が裂け、神の栄光が激しい光と共に現れた。四つの顔を持つ生き物たち、回る火の輪、そして煌めくサファイアの玉座——エゼキエルはひれ伏し、その威厳に圧倒された。
すると、玉座から力強い声が響いた。
**「人の子よ、立ち上がれ。わたしはあなたに語りかける。」**
その声は雷のようでありながら、心の奥深くに静かに沁み込んだ。エゼキエルは震えながら顔を上げた。すると、見よ、神の手が彼に向かって伸び、一巻の書物が差し出された。
**「人の子よ、わたしはあなたをイスラエルの民、反逆する者たちのもとに遣わす。彼らは強情で心が頑なだ。彼らが聞こうと聞くまいと、わたしの言葉を語れ。」**
エゼキエルの胸は不安で締め付けられた。イスラエルの民は長い間、神に背き、偶像にひれ伏してきた。彼らは預言者を拒み、時に迫害さえした。しかし、神の声は続いた。
**「恐れるな。たとえ彼らが茨とサソリの中に住む者であっても、彼らの顔に逆らうな。ただ、わたしの言葉を告げよ。」**
神の手がエゼキエルに触れると、彼の内に力が満ちた。畏れは消え、代わりに神の使命への確信が湧き上がった。差し出された書物を開くと、そこには哀歌と嘆き、災いの言葉が記されていた。
**「食べよ。この巻き物をあなたの腹に満たせ。そして、イスラエルの家に語れ。」**
エゼキエルが巻き物を口にすると、それは蜜のように甘かった。神の言葉は、たとえ裁きの宣告であっても、それを伝える者には命の糧となった。
やがて幻は消え、エゼキエルは再びケバル川の土手に一人取り残された。しかし、彼の心は燃えるように熱く、神の霊が彼を強く押し動かしていた。
**「わたしは行こう。たとえ彼らが聞かなくとも、主がわたしを遣わされたのだ。」**
こうしてエゼキエルは、反逆の民の中にあって神の声を響かせる者となった。彼の言葉は、やがて捕囚の民に希望をもたらし、神の正義と憐れみを証しするものとなっていくのである。