**詩篇17篇に基づく物語:神の正義を求めるダビデの祈り**
エン・ゲディの荒野で、ダビデは岩陰に身を隠していた。太陽が沈みかける頃、赤く染まった岩肌が彼の顔を照らした。彼の目には疲れと決意が混ざり合っていた。サウル王の追手は、まるで飢えた狼のように彼を探し回っていた。逃げ続ける日々の中で、ダビデの心は神に向かって叫んでいた。
「主よ、私の訴えを聞いてください。私の唇は欺きを語りません。私の願いが御前にあらわされますように。あなたの目は真実を見られます。」
ダビデは膝をつき、荒れた地面に額を押し付けた。彼の祈りは静かだが、心の奥底から湧き上がる激しい訴えだった。彼は自分が無実であることを神に訴えた。サウルは理由なく彼を敵とみなし、命を狙っていた。しかし、ダビデは決して復讐を選ばなかった。代わりに、神の正義を信じて待ち望んだ。
「あなたは私の心を探られ、夜も訪ねてこられました。私を試みられても、何も見つからなかったでしょう。私は悪人の道に歩まず、暴力を避けてきました。」
風が砂を巻き上げ、ダビデの衣を打ちつけた。彼は目を閉じ、神の御声を待った。まるで神が彼の隣に立たれ、彼の苦しみを見ておられるかのようだった。
「神よ、私を守ってください。死の陰から私を引き出してください。悪者たちは残忍で、私を捕らえようと狙っています。」
彼の脳裏には、サウルの兵士たちの姿が浮かんだ。彼らは剣を研ぎ、ダビデの命を奪おうとしていた。しかし、ダビデの信頼は人ではなく、神にあった。
「彼らは自分たちの富に誇り、傲慢に歩みます。彼らの口は高ぶり、今、私を囲んでいます。」
ダビデは拳を握りしめた。戦う力はあった。彼はかつてゴリアテを倒した勇士だ。しかし、彼は剣を抜かなかった。代わりに、神の裁きを待った。
「主よ、立ち上がって、彼らを打ち倒してください。あなたの剣で、悪しき者から私を救い出してください。」
夜が更けると、ダビデは星空を見上げた。天の川が輝き、神の栄光を告げているようだった。彼は深い安らぎを覚えた。神は必ず答えてくださる。
「私をあなたの翼の陰に隠してください。私を愛する者から離れず、命の光で満たしてください。」
やがて、ダビデは眠りについた。彼の夢には、神の御手が彼を包み、敵の脅威から守ってくださる光景が映った。
次の朝、ダビデは目を覚ますと、新たな力が湧いているのを感じた。彼は岩山を登り、遠くを見渡した。サウルの軍勢は、何かの理由で撤退していた。神が彼らの心を動かされたのかもしれない。
ダビデは感謝の祈りをささげた。
「私は、目覚めてもあなたの姿を見るでしょう。義なる方の御顔を仰ぎ見て、満ち足りるでしょう。」
こうして、ダビデは再び歩み始めた。彼の信頼は揺るがず、神の正義が必ず現れると確信していた。荒野の道は長く、困難は続いたが、神の御手が彼を導いていた。
(終わり)