聖書

ダビデの最後の献げ物と民の心

**歴代誌第一 29章に基づく物語**

イスラエルの王ダビデの治世の終わりが近づいていた。彼は年老い、白髪が頭を覆い、かつての戦士の面影は薄れていたが、その目は依然として燃えるような信仰の炎を宿していた。主なる神に対する彼の愛と、イスラエルの民への深い思いは、年を重ねるごとにますます強くなっていた。

ダビデは、息子ソロモンに王位を継がせる時が来たことを悟った。しかし、彼にはまだ果たすべき使命があった。それは、主の神殿を建てるための準備を整えることだった。主はダビデ自身に神殿を建てることを許さなかったが(歴代誌第一22:8)、彼は息子ソロモンのために材料を集め、設計を整え、民の心を備えさせることに全力を注いだ。

### **王の献げ物**

ある日、ダビデはエルサレムの広場にイスラエルのすべての指導者たち——族長たち、将軍たち、役人たち——を召集した。彼らは王の前に集まり、静かにその言葉を待った。ダビデは深い敬意を込めて語り始めた。

「わが子ソロモンは若く、経験が浅い。しかし、主は彼を選び、この偉大な使命——主の神殿を建てる務め——をお与えになった。この神殿は、ただ石や木材の建物ではなく、主の御名が永遠に住まわれる聖なる場所である。」

ダビデは続けて言った。

「私は、私の力の限り、主の家のために金、銀、青銅、鉄、木材、宝石を備えた。しかし、これだけでは足りない。主の神殿は、すべての民の心からの献げ物によって建てられるべきだ。」

そう言うと、ダビデは自ら進んで、私財の中から莫大な金銀を献げた。彼は王としての富を惜しみなく主にささげ、民に模範を示した。

「だれが、今日、心から主に献げ物をささげようとするか?」

### **民の応答**

ダビデの言葉に、民の心は熱く燃えた。族長たち、将軍たち、役人たちは次々と立ち上がり、金、銀、青銅、鉄、宝石を献げ始めた。彼らの顔には喜びがあふれ、主への愛がにじみ出ていた。

「私たちも王に従い、主のために献げます!」

民の献げ物は膨大な量にのぼり、神殿建設のための財宝は豊かに蓄えられた。人々はただ義務で献げたのではなく、心からの喜びをもってささげた。その様子は、まるで荒野の時代にモーセのもとにイスラエルが幕屋の材料を献げた時のようだった(出エジプト記35:20-29)。

### **ダビデの祈り**

献げ物が終わると、ダビデは民の前で天を仰ぎ、主を賛美した。

「主よ、あなたは偉大です。栄光と力、誉れと威光は、すべてあなたのものです。天も地も、すべてはあなたのものです。富と誉れはあなたから来るのです。」

彼の祈りは深く、神への畏れと感謝に満ちていた。

「私たちは、ただあなたの御前で旅人にすぎません。このすべての物は、もともとあなたのものです。私たちは、あなたのものをあなたに献げたにすぎません。」

ダビデはさらに、民がこのように喜んで献げることができたのは、すべて主の恵みによることを認めた。

「主よ、私たちの心を試し、真実な喜びをもってあなたに従う者としてください。」

そして最後に、彼は息子ソロモンのために祈った。

「どうか、ソロモンが真心をもってあなたの戒めを守り、この神殿を建てることができますように。」

### **ソロモンの即位とダビデの死**

その日、民は再びダビデに従うことを誓い、ソロモンを新しい王として認めた。彼らは主の御前で喜び祝い、ソロモンに忠誠を誓った。

やがてダビデは年老いて世を去り、先祖たちのもとに葬られた。彼の生涯は戦いと勝利、悔い改めと賛美に満ちたものだった。そして、彼が備えた神殿建設の計画は、息子ソロモンへと引き継がれていった。

**こうして、ダビデの最後の働きは、主への全き献身によって締めくくられた。彼の信仰と、民の心を一つにした指導力は、永遠にイスラエルの歴史に刻まれたのである。**

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