**詩篇113に基づく物語:賛美の朝**
朝もやがヨルダン川の水面に漂う頃、小さな村の外れにある粗末な家で、一人の女が静かに目を覚ました。彼女の名はハンナ。長年、子宝に恵まれず、村人たちの憐れみの視線に耐えながら暮らしていた。夫のエリアキムは真心深い男だったが、彼女の心の傷を完全に癒すことはできなかった。
「主をほめたたえよ。主のしもべたちよ。ほめたたえよ。主のみ名をほめたたえよ。」
ハンナは毎朝、この詩篇の言葉を口ずさんだ。彼女にとって、賛美は苦しみの中でも主にすがる唯一の方法だった。家の隅に置かれた小さなランプの灯りで、彼女は跪き、額を地面につけた。
「今よりとこしえまで、主のみ名はほむべきかな。日の出るところから日の入るところまで、主のみ名はほめたたえられる。」
彼女の声はかすかだったが、その言葉は天に届くように力強く響いた。外では、野の花が夜露に濡れ、朝日を浴びて輝き始めていた。主の栄光は、この小さな村にも、貧しい者たちの上にも等しく注がれていることを、ハンナは感じた。
その日、村に巡礼の群れがやってきた。エルサレムへ向かう途中、彼らは詩篇を歌いながら歩んでいた。ハンナは家の戸口に立ち、遠くから聞こえる賛美の声に耳を傾けた。
「主はすべての国々の上に高くいまし、その栄光は天の上にある。だれか主のようであろうか。私たちの神のように、高き御座に座し、自らを低くして、天と地を見おろされる方。」
その言葉を聞いたとき、ハンナの胸に熱いものがこみ上げた。主は確かに、高きところから彼女のような貧しい者に目を留め、恵みを与えてくださるお方なのだ。
それから数日後、ハンナは自分に変化が起きていることに気づいた。体調の異変を感じた彼女は、村の年老いた女預言者ミリアムを訪ねた。ミリアムはハンナの手を握り、静かに微笑んだ。
「主はあなたの祈りを聞かれた。あなたは身ごもっている。」
ハンナの目から涙が溢れた。長年の願いが、主の時にかなって叶えられたのだ。彼女は家に帰ると、再びひざまずき、詩篇113の言葉を賛美した。
「主は貧しい者をちりから引き上げ、乏しい者をあくたから引き上げて、君主たちとともにさせ、その民の君主たちとともに座につかせる。」
月が満ち、ハンナは健康な男の子を産んだ。村人たちは驚き、主の御業を語り合った。ハンナはその子を「ヨナタン(主は与え給うた)」と名づけ、毎日、主への感謝を捧げた。
それから数年後、ヨナタンは知恵と信仰に満ちた青年に成長し、村の指導者として人々を導くようになった。かつて貧しく、辱められていたハンナの家は、主の恵みによって尊いものとされたのだ。
「主をほめたたえよ。主のしもべたちよ。ほめたたえよ。主のみ名をほめたたえよ。」
ハンナの賛美は、彼女の子孫を通じて、いつまでも語り継がれていった。主は確かに、低き者を高く上げ、恵み深い御手で導かれるお方なのである。