**預言者ハガイの励まし:主の栄光が現れる**
冷たい風が吹き抜ける、エルサレムの秋の日。神殿の再建工事は遅々として進まず、人々の心もまた寒さに凍てついたようだった。捕囚から帰還したユダの民は、自分たちの家を建て直すことに忙しく、主の家は廃墟のまま放置されていた。しかし、預言者ハガイを通して主は語られた。「この宮の栄光は、以前よりも大きくなるであろう。わたしはこの場所に平和を与える。」(ハガイ2:9)
### **廃墟に立つ神殿**
ゼルバベル総督とヨシュア大祭司は、荒れ果てた神殿の前に立ち、ため息をついた。かつてソロモンが建てた豪華な神殿と比べ、今の工事の進み具合は惨憺たるものだった。資材も不足し、労働者の数も少ない。年配者たちは、昔の神殿の栄光を思い出し、涙を流した。「このような貧弱な建物で、主を礼拝できるのか?」と、彼らはつぶやいた。
その時、ハガイが民の前に立ち、主の言葉を告げた。
**「あなたがたのうち、昔の栄光を見た者は誰か?今、あなたがたの目にこの神殿はどのように見えるか?荒れ果てているように見えるか?しかし、主は言われる。『強くあれ、ゼルバベルよ。強くあれ、ヨシュアよ。強くあれ、すべての地の民よ。働け。わたしがあなたがたと共にいる。』」(ハガイ2:3-4)**
### **主の約束と励まし**
ハガイの声は力強く、人々の心に響いた。彼は続けて語った。
**「わたしはあなたがたをエジプトから導き出した時、わたしの霊をあなたがたのうちに留めた。今も同じように、恐れるな。わたしは再び天と地を揺るがし、すべての国の宝がこの神殿に運び込まれる。そして、この場所の栄光は、以前よりも大きくなる。」(ハガイ2:5-9)**
人々はこの言葉を聞き、再び希望を取り戻した。主が共におられ、この神殿を再び栄光で満たしてくださる。その確信が、彼らの手を再び動かした。石を積む音、木材を切る音が、エルサレムに響き渡った。
### **清めと祝福の約束**
しかし、ハガイはもう一つの警告を発した。
**「もし、聖なる肉を持った祭司が衣の裾でパンや煮物に触れても、それらは聖なるものになるだろうか?否、ならない。同様に、この民の働きも、主の前に汚れている。しかし、今日から心を改め、主に従うなら、祝福を受けるだろう。」(ハガイ2:12-19)**
人々は悔い改め、真心を込めて主に仕えることを誓った。すると、ハガイは最後に力強い約束を伝えた。
**「ゼルバベルよ、わたしはあなたを選んだ。あなたはわたしの印指輪のようだ。わたしがあなたを選び、堅く立てる。」(ハガイ2:23)**
### **希望の再建**
こうして、ユダの民は再び神殿建設に力を注ぎ始めた。彼らの心にあった失望は、主の約束によって希望へと変わった。荒れ果てていた石の山は、徐々に神殿の形を取り戻していく。
そして、やがて来るべきメシアの時代、この神殿にはかつてない栄光が満ちる時が来る——ハガイの預言は、遠い未来のキリストの到来をも指し示していた。
**「この宮の後の栄光は、前の栄光よりも大きくなる。万軍の主は言われる。」(ハガイ2:9)**
民は信じた。主の約束は必ず実現する。たとえ今は小さな始まりでも、神の栄光は再びこの地に満ちるのだと。