**エレミヤ書6章に基づく物語**
ユダの都、エルサレム。西の空が深紅に染まる頃、預言者エレミヤは神殿の階段に座り、人々のざわめきを聞いていた。市場では商人たちが金銀を量り、祭司たちは形式に則った犠牲を捧げ、民は笑いながら酒を酌み交わしていた。しかし、エレミヤの心は重かった。主の言葉が彼の胸に燃え、彼は立ち上がり、人々に向かって叫んだ。
**「聞け、エルサレムの民よ! 主はこう言われる!」**
彼の声は雷のように響き、通りを歩いていた者たちが振り返った。
「北から災いが来る。敵は獅子のように吼え、荒れ野の狼のように襲いかかる。彼らはこの都を包囲し、剣と炎で滅ぼす。なぜなら、お前たちは主の教えを捨て、欺きと不正に満ちているからだ!」
人々の顔に嘲笑が浮かんだ。一人の商人が嘲るように言った。
「エレミヤよ、またお前の恐ろしい話か? 我々は平和だ。神殿があるではないか。主は我々を見捨てるはずがない!」
エレミヤの目に涙が浮かんだ。
「お前たちは『平和、平和』と言うが、平和などない! お前たちの罪は天にまで届き、主の怒りを買った。祭司も預言者も、偽りの平安を語り、民を欺いている。傷を浅く癒し、『大丈夫だ』と言うが、内側は腐っている!」
彼の言葉は鋭く、まるで剣のように人々の胸を突いた。しかし、彼らは耳を塞ぎ、顔を背けた。
その夜、エレミヤは主の前にひざまずき、祈った。
「主よ、彼らは聞こうとしません。どうすればよいのでしょうか?」
すると、主の声が彼に響いた。
**「彼らは聞く耳を持たない。わたしの裁きは避けられない。ぶどうの房を摘む者のように、彼らを摘み取る。」**
翌朝、遠くの丘から黒い雲のような軍勢が近づくのが見えた。バビロンの軍である。彼らの鎧は太陽を反射し、槍の穂先は森のように林立していた。エルサレムの城壁の上で、見張りの者が叫んだ。
「敵が来る! 備えよ!」
しかし、もはや手遅れだった。主の裁きは決まっていた。
エレミヤは都の門に立ち、最後の警告を叫んだ。
**「悔い改めよ! 主を尋ね求めよ! さもなくば、この都は廃墟となり、お前たちは捕囚として連れ去られる!」**
しかし、人々は慌てふためき、祭司たちは偶像にすがり、王は愚かにも戦いを挑んだ。
やがて、バビロンの軍勢が城壁を破り、炎が神殿を包んだ。金の器は奪われ、子供たちは捕らえられ、エルサレムは血と灰に覆われた。
エレミヤは廃墟の中に立ち、泣きながら主に祈った。
「主よ、あなたの言葉は真実でした。」
そして、彼は残りの民に語った。
**「主は正しい方だ。我々が罪を悔い改めず、傲慢であったから、この裁きが下った。しかし、主は憐れみ深い。捕囚の後、再び我々を帰らせてくださる。」**
こうして、エルサレムは滅び、ユダの民はバビロンへと連れ去られた。しかし、エレミヤの言葉は、彼らの心に残り、やがて来る希望の光となった。
**「主の道を尋ねよ。そうすれば、あなたがたは生きる。」(エレミヤ6:16)**