ダビデ王の悲しみの日
エルサレムの王宮では、朝の光が大理石の床に優しく降り注いでいた。ダビデ王は窓辺に立ち、遠くに見えるオリーブ山を眺めながら、深い思索にふけっていた。その時、宮殿の外から次第に大きくなる騒ぎ声が聞こえてきた。
「父王、緊急の報せが届いております」と一人の侍従が息せき切って駆け込んできた。
ダビデが振り返ると、そこには顔面蒼白になった使者が跪いていた。「アブサロム王子が…ヘブロンで王位を宣言しました。多くのイスラエルの民が彼に従い、反乱軍がエルサレムに向かって進軍しております」
ダビデの顔から血の気が引いた。彼は静かにうつむき、しばらく祈りをささげてから、穏やかでありながら決然とした声で言った。「主の御心のままに。我々は都を離れなければならない」
王宮内はたちまち慌ただしくなった。ダビデは忠実な家臣たちに命じ、必要なものだけを持って出発の準備を整えさせた。彼自身は粗布をまとい、頭に灰をかぶって悔い改めのしるしを示した。
逃亡の行列は哀れなものだった。王の親衛隊を先頭に、祭司たちが聖櫃を担ぎ、家臣や侍女たちが続いた。民衆は道端に集まり、泣き声をあげながら王を見送った。ダビデはキデロンの谷を渡るとき、深い悲しみに暮れて歩みを緩めた。
「ツァドクとアビアタルよ、聖櫃を都に戻しなさい」とダビデは祭司たちに命じた。「もし主が私を恵まれるなら、私は再び聖櫃とその住まいを見るだろう。しかしもし主が『お前をわたしは喜ばない』と言われるなら、ここにいます。どうか御心のままにわたしを扱ってください」
王は顔を覆って泣きながら、オリーブ山の急な坂道を登っていった。その途中、フシャイという友が悔い改めの服装で彼を出迎えた。ダビデはフシャイに言った。「もしお前が私と共に進むなら、私の重荷になるだけだ。都に戻り、アブサロムに仕えるふりをして、アヒトフェルの助言を無力化してくれ」
山頂に着くと、ダビデは再び主に向かって祈った。その時、もう一人の忠実な友、ツィバがろばとパン、果物を持って現れた。ダビデは彼の忠誠に心を動かされた。
一方、エルサレムではアブサロムが王宮に入り、父の王座に座っていた。彼は金色の衣をまとい、威厳を装っていたが、その目には野心と不安が入り混じっていた。アヒトフェルはすぐにダビデを追撃するよう進言したが、ちょうどその時、フシャイが到着した。
「友よ、なぜ都に戻ってきたのか?」とアブサロムが尋ねた。
フシャイは巧みに答えました。「私は主と民とイスラエルのすべての人々が選んだ方に仕えます。かつてあなたの父に仕えたように、今はあなたに仕えましょう」
アブサロムは次にアヒトフェルに助言を求めた。アヒトフェルは冷酷な提案をした。「父王の側室たちをあなたのものにしてください。そうすれば、すべてのイスラエルはあなたが父に対して完全に決別したことを知るでしょう」
この恐るべき助言が実行に移される間、フシャイは密かに祭司たちを通じてダビデに警告を送った。「今夜、野原で宿泊してはいけません。直ちにヨルダン川を渡り、追手から逃れてください」
ダビデとその一行は疲れ果てながらも夜通し歩き続け、ついにヨルダン川の岸辺にたどり着いた。そこで彼らは休息を取り、次の移動に備えた。ダビデは川の流れを見つめながら、主の導きを静かに祈り求めた。
こうしてダビデの苦難の旅は続き、彼は主への信頼と、かつて犯した罪に対する悔い改めの心を新たにしていったのである。すべては主の御手の中にあり、その審きと恵みは常に真実であることを、年老いた王は深く心に刻んだ。



